『社会心理学講義』は、人間や人間がつくる社会とはどういうものかを、徹底的に掘り下げた一冊。『夢遊病者たち』は歴史観や責任感の欠けたリーダーが何をもたらしたか、『バブル 日本迷走の原点』は失われた20年を総括しています。

歴史からの教訓をふまえたうえで、経済の現状をリアルに認識するためには、『連続講義・デフレと経済政策』を。『生産性』は、人口減に悩む日本経済を救うための処方箋で、将来の企業経営を考えるヒントにもなります。ぜひ参考にしてください。

戦略書としては孫子も優れているとは思いますが、学びが多いという意味では、やはり『カエサル戦記集』が一番の教材ではないでしょうか。この企画のタイトルは「孫子の次に学ぶべきもの」? それよりも、孫子の前に読むといいかもしれません。

▼Recommended Books

出口治明が薦める 人間と社会を知るための+5冊
(写真左から)


『連続講義・デフレと経済政策』●池尾和人/日経BP社

「異次元の金融緩和」をこのまま続けると、米国のリーマンショックの二の舞いに? マクロ経済学の新潮流を踏まえ、アベノミクスに正面から切り込んで批判した意欲作。


『夢遊病者たち』1・2●クリストファー・クラーク/みすず書房
第1次世界大戦は英国、フランスなど欧州列強の無策が引き起こした。ドイツ戦争責任論を真っ向から覆し、注目された歴史書。失敗の歴史からリーダーのあり方を学ぶ。


『生産性』●伊賀泰代/ダイヤモンド社
日本のホワイトカラーの生産性を改善するにはどうしたらいいか。話題になった前著『採用基準』でリーダーシップ論を説いたマッキンゼー出身の著者が、その秘策を伝授する。


『社会心理学講義』●小坂井敏晶/筑摩選書
社会システムは「同一性と変化」という、相反する原理をどのように維持してきたのか? 社会心理学のテキストだが、人間社会の成り立ちを理解するための好著でもある。


『バブル 日本迷走の原点』●永野健二/新潮社
バブルの正体は何か、日本経済を破壊した真犯人は誰か。バブル期の無責任なリーダーたちの姿を赤裸々に描く。そこには、過ちを繰り返さないための貴重な教訓がある。

(構成=野澤正毅 撮影=岡田晃奈)
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