埼玉県羽生市は「農地の宅地化」で大混乱

生産緑地の多いエリアで不動産投資をしている人はどうだろう。実は、農地の宅地化には悪しき先例がある。埼玉県羽生市の施策だ。

森田聡子『取られっぱなしでいいの? 節税のツボとドツボ』(日経BP社)

同市は2003年、市街化調整区域内の農地に住宅建設ができるという条例を策定した。市の狙いは戸建て住宅を増やして定住者を確保することだったが、建設業者などの介入もあり、実際には新築のアパートが150棟も乱立。同市の規模からすると150棟は明らかな供給過剰で、空室率は35%を超えた。結果として12年後の2015年、同市はやむなく住宅建設可能なエリアを元に戻したのだ。

土地の大量供給によって周辺に新築で安い物件が多数出てくれば、店子がそちらに流れてしまうのは防ぎようがない。ローンを利用していたら、返済計画にも支障を来す。いよいよ追い詰められて売却を決意した時は、売り物件があふれていて身動きが取れなくなっている危険性もある。影響を受けそうな物件は売れるうちに売っておき、2022年以降の様子を見るべきだろう。

“100%ローン”の利用者は早めの対策を

2022年問題の影響を受けそうなエリアに自宅を購入し、ローンの返済を多く残している人も安閑としていられない。バブル経済が崩壊した後の1990年代には地価の急落により、不動産価格が負債を下回る“担保割れ”が続出した。

21世紀以降の住宅ローン金利は当時と比べて破格に低い水準にあり、担保割れですぐに返済が逼迫するような事態は考えづらいが、だとしても、“100%ローン”の利用者などは今から何かしらの手を打っておきたいところだ。特に変動金利のローンを利用している人は、金利上昇による返済額のアップとのダブルパンチを食らうリスクもある。今のうちに繰り上げ返済や借り換えなどを検討したい。