ゴーン会長は巨額の資金をどう使っていたのか

中盤で東京社説は指摘する。

「経営危機の際、日産は取引先を含め塗炭の苦しみを味わった。ライバルのトヨタ自動車に大差をつけられ辛酸をなめた。それを助けたのがゴーン容疑者だ。彼は社内では可能な限り日本語を使い、『信じてください』と呼び掛けた。社員は意気に感じただろう」
「その人物が裏切っていたとしたら、共に立て直しに頑張った社員や関連会社の人たちはどう思うのだろう」

読者の感情に訴えるうまい書き方である。東京社説は最後にこうまとめ、筆を置く。

「富裕層はどこまで貪欲なのか。これが一般の人々の正直な感想だろう。人生で、ゴーン容疑者が得ていたような年十億円以上もの所得は必要なのか。格差の著しい拡大は人々の心を傷つけ、働く意欲をそぐ。今回の事態を、不条理な経済格差是正の突破口としたい」

ゴーン会長は巨額の資金をどう使っていたのか。東京社説が指摘するように、それは「富裕層の闇」だろう。東京地検の捜査によって解明されることを期待したい。

日産の経営陣は「被害者」ではなく「事件の当事者」

21日付で全国紙は一斉に社説を書いてきたが、東京新聞も「日産の企業統治 権力集中だけが原因か」との見出しを掲げ、こう主張している。

「(ゴーン会長がうその記述をした有価証券報告書は)極めて重要な文書であり、監査法人か公認会計士の監査証明も必要だ。監査役を含む役員らは毎年、その内容を詳しく読んでいるはずで、容疑が事実ならうその記載を長年見過ごしてきたことになる」
「その意味で、逮捕された二人の容疑者以外の日産の経営陣は、独裁型トップの被害者などではなく、事件の当事者といえるはずだ」

ゴーン会長の下にいた役員らは、会社を私物化するトップの不正を黙認していたことになる。社内のチェック機能はどうなっていたのか。ゴーン会長の不正を見逃してきた幹部らの責任は重い。司法取引によって刑事責任を免れたとしても、社会的責任はなくならない。

東京社説はこうも指摘する。

「西川社長は『株主や関係者にご心配をかけ、深くおわび申し上げます』と謝罪した」
「しかし、日産を支えてきた消費者に謝罪の気持ちをもっと伝えるべきではないか。日産やルノーの株価が急落する中、株主への配慮ばかり気にしている印象である」

企業はだれのものか。改めて考えさせられる。

(写真=時事通信フォト)
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