「金融商品取引法違反」の刑事罰は引き上げられている
東京地検特捜部は19日夜、日産・仏ルノー・三菱自動車の会長を兼務するカルロス・ゴーン会長と日産のグレッグ・ケリー代表取締役(62)の2人を金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで逮捕するとともに、日産本社など関係先を家宅捜索して資料を押収した。
午後8時には逮捕を発表したが、今後の捜査の見通しには「回答を控える」とした。
気になるのは逮捕容疑だ。この金融商品取引法は、旧証券取引法や旧金融先物取引法などを1本にまとめたもので、有価証券報告書にうその記載をした場合に刑事罰を科している。10年以下の懲役か、1千万円以下の罰金(法人は7億円以下の罰金)だ。2007年9月の施行前にカネボウやライブドアなどで経営陣主導の粉飾決算が相次いだため、刑事罰が引き上げられ、強化された。
2012年にはこの法律でオリンパスの経営陣が東京地検に逮捕されているものの、会長の不祥事が問題になった東芝の事件では個人の刑事責任の追及までには至らなかった。
そもそも知能犯罪の捜査では、旧証券取引法を根拠にして有価証券報告書に虚偽の記載を見つけ出す捜査というのは、本丸に入るための手段に過ぎなかった。立件しやすいところを突破口にしてその先で贈収賄や背任、あるいは脱税の容疑での立件を目指す。これが捜査の常套だった。それがいまや、突破口が本筋になっているのだから捜査も大きく変わったものである。
高級住宅の提供を無償で受けていた疑いも
今後ゴーン会長が背任容疑や脱税容疑で再逮捕されて起訴される可能性もある。日産はゴーン会長を会社に損害を与えてという特別背任容疑や業務上横領の罪で告訴する考えを示しているし、所得税法違反という脱税の疑いも濃厚だ。
ゴーン会長が逮捕された19日午後10時から記者会見をした日産の西川広人社長は「社内の調査で私的目的での会社の資金の流用や経費の不正な使用が判明した」と述べている。ブラジルのリオデジャネイロやレバノンのベイルートで日産の海外子会社が持つ高級住宅の提供を無償で受けていた疑いも出ている。ブラジルはゴーン会長の生まれ故郷で、レバノンは幼少のころに渡った国だ。
高級住宅の提供を不正に受けていたとすれば、特別背任や業務上横領の容疑も成立するし、税務申告されていなければ所得税法違反にも問われる。