生き残ることを目指した統合と、社会貢献を目指した統合。どうやら、明菓、明乳の“統合の謎”を解くヒントはこのあたりにありそうである。

事業の再編が完了するのは2年後がメドということだから、再編作業はまだ緒についたばかりだが、両社長の話を総合すると、菓子と乳製品という既存の中核事業を強化しつつ、健康食品や海外事業などの新しい分野、抗菌薬、うつ病治療薬、ジェネリック医薬品などを開発し、利益率の高い医薬品の分野に経営資源を集中的に投入していくことになる。また、物流の温度帯が異なることを逆手に取って、チルドデザートやアイスクリームの分野で新商品を開発していきたいともいう。明乳・アイスクリーム冷食販売部部長の齊藤昇一が言う。

「これまでは明乳がアイスクリームをやって、明菓さんは手を出さないと、そういう不文律がありました。でも、これからは明菓さんのほうから菓子のアイデアをもらって新しいものをつくれる。そういう可能性がすごく広がりますね。実際、研究段階ではすでに話し合いが始まっています。僕はね、30代、40代の女性に向けたスナック感覚のアイスクリームをやってみたいんですよ」

スナック菓子とアイスクリームの融合。まさに、事業分野が異なる企業同士の統合だからこそ、膨らむ夢である。

佐藤社長が有望視する健康食品、スポーツ栄養食品の分野では、明菓に「アミノコラーゲン」「ザバス」があり、明乳には「ヴァーム」がある。また、明乳は粉ミルクの「ほほえみ」と、「メイバランス」というメディカルニュートリション(流動食)の商品群を持ち、08年には流動食専門の工場を設けている。明菓・健康事業商品企画部長の石田邦雄が言う。

「健康食品関係で言えば、明乳さんのターゲットは乳幼児と介護関連。うちの『アミノコラーゲン』や『ザバス』は、その中間の年齢層狙いです。ターゲットも違うし販売ルートも異なりますが、両社を合わせれば乳幼児から高齢者まで一貫してカバーする体制をつくることができる。両社の得意技は異なりますが、違う技を組み合わせることで新しい市場をつくれる可能性が広がると思います」(文中敬称略)

※すべて雑誌掲載当時

(永井 浩=撮影 ※肩書は取材時のもの)