ところで、大型の経営統合として記憶に新しいものに、02年の日本鋼管と川崎製鉄の例がある。両社は明菓、明乳と異なり、事業内容がほぼイコールだった。統合によって発足したJFEスチールは、重複する生産ラインの徹底的な統廃合によって、05年には当初見込みの2倍近い経常利益を叩き出すことに成功している。このことをもって「経営統合のお手本」と呼ぶ識者が多かった。
統合によって体力を増強し、ムダを省き、シェアを拡大して業界内での生き残りを図る。それに成功した統合が称賛を浴びてきたのだ。だが、佐藤社長の考え方は、これとは大きく異なる。
「われわれの統合が新しいスタイルの統合かどうかはわかりませんが、両社はお客様の生活の充実に貢献するという共通の企業理念を持っております。それを実現するために、どのような統合のあり方が最適なのか。狭い範囲で、たとえばチョコレート屋とチョコレート屋が一緒になってパッとシェアを増やし、パッとリストラをやって利益を出す。こうした統合は、長い目で見たとき、お客様の生活の充実にはさほど貢献しないのではないか。そう私は思うのです」
浅野社長は、別の表現をする。
「僕は、これは新しいスタイルの統合だと思いますよ。普通は、追いこまれてから存続第一で統合するのでしょうが、われわれは発展第一。ロングスパンでものを考えたうえでの統合なんです」