新卒採用と通年採用のメリット・デメリット

さて、私は「就活ルール廃止」後の新卒採用の具体的なモデルとして、「ターム&プール採用」を提唱しています。「ターム&プール採用」の詳細は、「就活を”夏休みと春休み”に集中すべき理由」をご覧ください。

「ターム&プール採用モデル」のイメージ(作成=田中研之輔)

この「ターム&プール採用」モデルは、新卒採用と通年採用のメリットとデメリットを考慮して構築しました。それぞれ順にみていきます。

新卒採用は、集中した期間で大量の人材を一括採用できるのがメリットです。その後の社内研修や社内教育を均一的に実施できるため、人事コストも抑えられます。その反面で、9月卒業の大学生が4月入社のエントリー条件に適合しなかったり、海外留学組の学生が採用スケジュールから漏れたりしてしまっていました。また、一発採用のため、採用時期に病気やケガなどで就職活動ができなかった場合には就職留年をしてしまうという、制度運用上のデメリットも抱えていました。

通年採用にすれば、企業側も学生側も、それぞれのタイミングで採用や就活を実施できるようになります。学生は卒業後に海外インターン経験を積んでから、国内の企業に新卒枠で就職することも可能です。ただし、選考開始時期が自由化されると採用活動は早期化し、それに伴い長期化することが予想されます。すると新卒採用担当者は、一年中、採用活動に追われることになり、学生側は、今まで以上に常に就活を意識した学生生活を過ごさなければなりません。

「ターム&プール採用」の展開でカギ握る4者

新卒一括採用と通年採用が持つそれぞれのデメリットを回避したのが、第三の新卒採用である「ターム&プール採用」です。「ターム&プール採用」の最大の特徴は、(1)学業の妨げにならない就職活動、(2)企業側の採用負担の軽減、(3)学生の主体的なキャリア選択の実現、という3点にあります。

「ターム&プール採用」を展開していく上で鍵を握るのは、次の4つの関係者です。

第一に、今まさに、新たな採用活動を模索している企業担当者の方々です。新卒一括採用での大量エントリーからの選考に疑問を感じつつも、通年採用を実施する人的・経済的コストを抑えたいのであれば、「ターム&プール採用」を軸にした採用スケジュールを作っていきましょう。

例えば、「学業を大切にするあなたに来てほしい」といったメッセージは、今の就活生に響きます。「就活のせいでゼミに出られない。就活のせいで大学に来られないのは、おかしい」と感じている学生は少なくないのです。いくつかの企業がこれから「ターム&プール採用」を導入し、採用の成功事例を共有していけば、この制度が根付いていくと考えられます。いわば、採用の現場発で行う新卒採用の革新です。