理工系学部出身の女性、いわゆる「リケジョ」は、採用や出世、家庭の両立など、多くの点で、文系より「得している」という。日本総研の調査によると、文系女性より「総合職や専門職として採用される率」や「新卒で就職した会社での定着率」「出産後の就業継続率」が高い。それにもかかわらず日本のリケジョの割合は、先進平均の半分程度と少ない。なぜなのか――。

文系より恵まれているのにリケジョが少ないのはなぜか

日本は先進国の中で、高等教育で理工系を専攻する女性、いわゆる「リケジョ」が相対的に少なく、各国平均の半分程度にとどまってます。

経済協力開発機構(OECD)の「OECD Education at a Glance 2017」によると、高等教育入学者において、「自然科学・数学・統計」を専攻する女性の割合は、OECD諸国平均が50%であるのに対して日本は25%。また、「機械・工学・建築」を専攻する女性の割合は、平均が24%であるのに対して日本は13%です。

なぜ日本では理工系女性が少ないのか。私はその理由のひとつとして、「理工系には仕事と家庭の両立が難しいというイメージがあるからではないか」と考えました。理工系の人が勤める職場は男性が多く、勤務時間が長く(あるいは不規則)、また勤務場所(例:工事現場)によっては体力が求められ、女性が仕事と家庭の両立の負担は重いのではないかと想像したためです。

本稿では、この仮説を検証するため、日本総合研究所の調査結果()に基づき、理工系女性と文系女性のライフコースの実態について掘り下げてみたいと思います。

※2015年3月に東京圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)で暮らす25~44歳の女性に実施した調査(有効回答数1828人、以下、「2015年調査」)と、2017年3月に実施した追跡調査(有効回答数783人、以下、「2017年調査」)。

「希望通りの就職できた」文系47.5%:理工系62.2%

【1:リケジョの就職活動】

「2015年調査」では、現在働いている女性と仕事を辞めた女性に対して、「かつて新卒として就職活動を行った時に希望していた就職先に就職ができたか」と尋ねています。希望通りの就職先に就職ができた女性は、文系で47.5%、理工系で62.2%。一方、就職先が決まらなかった女性は、文系5.7%、理工系で1.8%です。理工系女性は文系女性に比べて、希望通りの就職ができ、就職先も決まりやすいことがわかります。

就職先の業種と職種を見ると、文系女性の最も多い就職先は、金融業(13.5%)であり、教育・人材(9.3%)、IT・情報通信(8.0%)と続きます。一方、理工系女性の最も多い就職先は、IT・情報通信(18.7%)であり、病院・その他医療・福祉関係施設(17.1%)、建設・住宅・不動産(10.3%)と続きます。

また、総合職として就職した女性は、文系36.2%、理工系46.7%、専門職として就職した女性は、文系7.0%、理工系24.9%と、いずれも理工系が多くなっています。その一方、一般職(一般事務職)で就職した女性は、文系33.1%、理工系9.0%と、文系のほうがはるかに多くなっています。

つまり理工系女性のほうが、専門性の求められる仕事に採用されやすい傾向があるのです。