医大の裏口入学と潜水艦

文部科学省幹部の息子を裏口入学させたなどとして、理事長と学長が起訴された東京医科大。長年にわたる組織的な裏口入学のあっせんに加えて、入学試験での全学生に対して一律減点(0.8倍)をしたうえで、男子学生(現役から3浪まで)に対しては大幅に加点していたことが明らかになった。「大学病院関連の医師を確保するため、暗黙の了解だった」という大学側の言い分に対し、世間から批判の声が高まっている。

この不正はとてもむずかしい問題で、テレビのワイドショーなどがいう「もうそんな時代ではない」などと片付けられないものだと思う。私の目には「世界はまだまだそんな時代だ」と映ってしまうのである。

その最たるものが、潜水艦乗りであろう。自衛隊ではこれまで女性の乗務員は存在していない。現状でも育成をしていないので、しばらくは女性の乗務員は誕生しないことになる。この理由は簡単で「女性用の区画」が狭いので確保できないのだ。当然、スペースに余裕のある護衛艦などでは女性乗務員が存在している。船乗りの間でも、「海=女性」と考えられているので、「海の神さまに嫉妬されて不幸が起きる」として船に女性が乗ることを嫌う漁師は多い。その背景には男ばかりの密室のような職場に女性が入ると、恋愛のもつれなど面倒なことが起きることを心配したのかもしれない。

迷信レベルであれば、マンホールの下、つまり下水工事でも「穴に入る」作業ということで、穴が女性を暗示するとされ、男性作業員が優先されているようだ。

想像するに、体力的に相当きつい現場は、女性は大変だろうとの配慮から生まれた慣習ではないのだろうか。このように男女で待遇が違っていても「合理的な配慮」なのか「不当な差別」なのかが判然としないケースは多々ある。

通勤電車の「女性専用車両」はその象徴的な存在であろう。痴漢防止のために、男性が乗れない専用車両が定着したが、これを差別などと怒る人はいない。真の平等という意味ではおかしな話だが、やはり男女間でも現実的な運用をしていくより仕方がないのだ。

今回の東京医科大のケースも、当事者でもある女性医師たちが、この大学側の言い分に理解を示していることがわかる。東京医科大だけの問題ではなく医学界共通の問題であると指摘する声も多い。

女性医師向けのウェブマガジンを発行している企業が実施したアンケートでは、東京医科大の対応について「理解できる」が18.4%、「ある程度は理解できる」が46.6%。あわせて6割以上の女性医師が、東京医科大の言い分にある程度納得しているのである。

タレントとして活躍されている西川史子医師もテレビ番組で「(成績の)上から採っていったら女性ばかりになって、眼科医と皮膚科医だらけになってしまう」「やっぱり外科医になってくれるような男手が必要」などと発言して話題になった。アンケートでも「女子減点は不当だが、男性医師がいないと現場は回らない」といった回答もあった。

実際に厚生労働省の調査でも、診療科別の女性医師の割合は皮膚科、眼科、麻酔科がベストスリーで、外科系の診療科に進む女性は少ない。また、常勤勤務医の平均週間勤務時間は、20代では男性57.3時間に対して、女性53.5時間だが、30代になると、男性56.4時間に対して、女性45.2時間と、明らかに男性のほうの負担が大きい。

この勤務時間は厚労省の調査で出てきた数値で、医師の長時間勤務はさらに過酷な実態がある。今年1月、東京・渋谷の日赤医療センターで月間の残業時間を「過労死ライン」の2倍にあたる月200時間まで容認する労使協定を結んでいたことが発覚した。病院の勤務医なら30時間連続勤務は当たり前。なかでも外科では、そんな状況で立ったまま長時間の手術に及ぶこともある。その際、トイレは大小問わずその場で済ますこともあるようだ。女性の尊厳が守られる職場とは言い難い。