「高ストレス者」が一般企業の2倍もいる職場
私は、「国会議員秘書のストレスに関する研究」というテーマで、アンケート調査などを用いた研究(量的研究)とインタビューを用いた研究(質的研究)を試みました。量的研究では、155名の議員秘書に協力を依頼し、いくつかのアンケート調査に回答してもらいました。その中から2つの調査結果を、ここでご紹介します。
1つ目のアンケート調査は、議員秘書のストレスを数値化するための職業性ストレス簡易調査票(ストレスチェック)を用いた調査です。ストレスチェックは一般の会社でも受検されている方も多いと思いますが、それと同じものです。
議員秘書のストレスチェックでは、ストレス反応(ストレスによってなんらかの影響が出ている状態。たとえば、不眠や食欲不振、腰痛など)に、「職場の人間関係」と「仕事量」が影響していることがわかりました。人間関係ということでは、仕事内容について指示を出す事実上の雇用主である国会議員に気をつかうのはもちろん、同じ秘書同士であっても年齢やキャリアなどのずれがあって相談しづらいことがあります。また、限られた人数で処理する案件が多いので、秘書の仕事量も常に過剰になっているケースが多いと思われます。
ストレスチェックは、高ストレス者(ストレスの点数が高く、産業医との面談が推奨される人たち)を選定する役割も担っていて、高ストレス者に該当する者の割合が全体の10%程度となるよう設計されています。ところが、議員秘書155名を対象に実施したストレスチェックでは、有効回答144名のうち33名、つまり23%の議員秘書が高ストレス者に該当するという結果が出ました。議員秘書の高ストレス者の割合は通常の2倍以上もあったのです。
首尾一貫感覚の高い秘書は低ストレス
2つ目のアンケート調査は、議員秘書の首尾一貫感覚について調べるために行ないました。この調査では、個別のインタビュー調査も併用して実施しました。
これまでの研究では、首尾一貫感覚が高い就労者はストレス反応が低いことがわかっています。今回の議員秘書を対象とした調査の結果でも、一般の就労者と同様に、首尾一貫感覚が高い議員秘書はストレス反応が低いことがわかりました。
また、首尾一貫感覚の3つの感覚(把握可能感・処理可能感・有意味感)のうち、どの感覚がストレス反応に影響を与えているのかについて調査したところ、とくに「処理可能感」と「有意味感」が影響を与えていることがわかりました。