議員や後援会からの理不尽な要求、休日出勤を含む長時間労働、不安定な雇用や報酬……。国会議員秘書は、まさに「ブラック」というほかない職場環境で日々働いている。そんなストレスフルな職場でも、潰れずに出世していく人はどこが違うのか。ストレス・マネジメント研究者の舟木彩乃氏は「生き残る人は『首尾一貫感覚』をもっている」という――。

※本稿は、舟木彩乃『「首尾一貫感覚」で心を強くする』(小学館新書)の一部を再編集したものです。

議員秘書155名を対象に実施したストレスチェックでは、、産業医との面談が推奨される高ストレス者が23%と、一般企業の2倍ほどの結果に。それでも活躍する人は何が違うのか――。(※写真はイメージです 写真=iStock.com/Mari05)

ストレス研究のテーマとしての「国会議員秘書」

世の中には数えきれないほどの職業があり、ストレスの多い仕事もたくさんあります。いわゆる「ブラック企業」や「ブラック職場」と呼ばれるように、会社ごと組織ごとに固有のストレスを有するケースも多々ありますが、職種によってストレスが過剰にかかりやすい傾向があるのも事実です。

そんなストレス過剰な職場の典型として私が研究テーマとしたのが「国会議員秘書」という仕事です。私がこのテーマを研究しようと思ったきっかけは、知人から、週に数回でいいから議員秘書の仕事をやってみないかと声をかけてもらったことです。

「明日にでも議員と面接をしてほしい」という急ぎようでしたので、事情を聞くと、前の秘書が失踪に近い辞め方をして連絡がつかなくなっているうえ、政策担当秘書も辞めてしまいそうな状況にあり、それ以外の秘書もうつ病のような症状になって休みがちで、物理的に事務所の仕事がまったくまわらない状態だということでした。もっと精神的に強い人がほしいという要望もあり、当時からカウンセラーの仕事もしていた私に声がかかったようです。

この状況を聞くだけでも、議員事務所がブラックな職場だということは容易に想像がついてしまいます。結果的に、このとき声をかけていただいた議員事務所の仕事は断りましたが、カウンセラーという職業柄もあり、このベールに包まれた職場環境に興味を持ちました。そして、また違うご縁からほかの議員事務所で働く機会があり、カウンセラーと議員秘書という“二足の草鞋”を履く生活が始まったのです。