被害者の代わりに加害者と向き合う

――どのようにストーカー被害者を助ける活動をしたのですか?

私がストーカー被害にあっていたときは、「誰でもいいから私と相手の間に入って盾になってほしい、できれば相手の気持ちを変えてほしい」と思っていました。実は私も、被害にあっているときにカウンセラーに相談したことがあるのですが、カウンセラーは「あなたが強くなりなさい」などと言うばかりで、実際に私と加害者の間に入ってくれるわけではなかった。

ですから私は、被害を受けている人の代わりに加害者に対峙してストーカーをやめさせるカウンセラーになりたいと思いました。被害者から相談を受けたら、ストーキングをしている加害者に連絡を入れ、「○○さんが苦しんでいるので、やめてくれませんか」とお願いします。

ストーカーはアディクションだと気づいた

ストーカーの加害者に会ってみると、恐ろしいことを言っていながら意外にも繊細な人が多くて、離れていった相手を攻撃しつつ関係修復を期待していたり、相手と会えない苦しみで生きるか死ぬかの瀬戸際をさまよっていたり、とにかく、ものすごく苦しんでいたのです。

そうした姿を見るうちに、私自身が21歳の時、ストーカーだったことに思い当たったのです。大学に入ってすぐに付き合った男性が離れて行って、焦って自宅近くの駅で何時間も待ち伏せをしたり、しつこく家に電話をかけ続けたりしていたのです。当時の私はそれを悪いとは全く思っていなくて、「私を見捨てて去っていく相手が悪い」と思っていました。

それで、「これは、アルコールや薬物に対する嗜癖(しへき)と同じ苦しみだ」と思ったんです。ストーカー行為は、禁断症状に似た症状を引き起こすほど強い、相手への接近欲求があり、関心を持つこと、反応を欲しがることをやめられないという病態なのだと腑に落ちたのです。

小早川明子(こばやかわ・あきこ)
NPO法人「NPOヒューマニティ」理事長
1959年生まれ、中央大学文学部卒業。ストーカー問題、DVなど、あらゆるハラスメント相談に対処している。1999年に活動を始めて以来、500人以上のストーキング加害者と向き合い、カウンセリングを行う。著書に『「ストーカー」は何を考えているか』(新潮新書)、『ストーカー -「普通の人」がなぜ豹変するのか』(中公新書ラクレ)など。
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