ワーキングメモリは、鍛えることができる
段取り上手になるためにいま1度、ワーキングメモリに着目してみよう。仕事がはかどらない原因としてワーキングメモリの容量の限界を挙げたが、最近の研究から以前は増やすことができないと思われていたワーキングメモリを鍛えることが可能だとわかってきた。
「ノーベル生理学・医学賞を決めることで有名なスウェーデンのカロリンスカ研究所のトーケル・クリングバーグ博士をはじめ、複数の論文でワーキングメモリは鍛えることができるというレポートが出ています」
ワーキングメモリの容量が増えれば、それだけ同時処理の能力が高まり、段取りにもプラスになる。もちろんトレーニングした次の日から効果が出るというものではないが、神経衰弱のようなゲームを続けていくとワーキングメモリが増えるそうだ。
「でも、みなさんは神経衰弱が上手くなりたいわけではないでしょう。ビジネスパーソンなら、やはり仕事の中でトレーニングすることが大事。頭の中で情報操作をたくさん行うとワーキングメモリが鍛えられます」
時間をかけて仕事の中で「いい失敗」をたくさん経験し、ワーキングメモリを鍛えながら優先順位を適切に付けられるセンスを身に付けていくのが、段取りの達人になる王道のようだ。
池谷裕二(いけがや・ゆうじ)
東京大学薬学部教授
脳研究者。1970年、静岡県生まれ。脳の健康や老化について探究している。著書に『海馬』『単純な脳、複雑な「私」』など。近著は『パパは脳研究者』。2013年、日本学士院学術奨励賞を受賞。
東京大学薬学部教授
脳研究者。1970年、静岡県生まれ。脳の健康や老化について探究している。著書に『海馬』『単純な脳、複雑な「私」』など。近著は『パパは脳研究者』。2013年、日本学士院学術奨励賞を受賞。
(撮影=石橋素幸 写真=Getty Images、amanaimages、iStock.com)