「人生100年」時代に、もたらすメリットとは

副業解禁は、企業だけでなく、企業で働く社員にもメリットがあります。今、副業が最も必要とされているのは、役職定年や定年を迎えるような50~60代のシニア世代です。「人生100年」と言われる中、定年の60歳や再雇用が終わる65歳で、きっぱりリタイアしにくくなっています。しかし、60歳や65歳で退職して、翌日から新たな仕事を探しても、これまでやってきた仕事とは無関係の、単価の高くない仕事がほとんどです。仕事へのモチベーションも上がらないでしょう。

しかし副業を解禁すれば、在職中から副業を通じて退職後も働き続けるための準備ができます。また、役職定年や退職後の再雇用になると年収が大幅に下がりますが、副業を認めることでその差を埋めることも可能になります。

先に触れた通り、単価の高い複業をするには一定の準備期間が必要です。例えば、中小企業診断士を目指すとすれば、資格取得のために1年以上かかりますし、資格を取ってもすぐに顧客を確保できるわけではありません。50代になってから焦るのではなく、30代、40代から早めに準備を始めた人ほど、複業ができる可能性は高まります。

複業を実現するうえで大切なポイントは、「能力は掛け算で広がる」ということです。例えば転職する場合、現在の仕事と全く別の仕事をやりたいと思っても、0×1=0ですから、面接を受けてもなかなかうまくいきません。むしろ、今の仕事で身についた能力や経験を別の分野で生かすようにしたほうが、1×1=1、1×2=2……となって可能性が広がっていきます。複業も同じで、現在の仕事と全く別のことをゼロから始めるのは難しい。しかし、今の仕事に関連したことや、あるいは人より秀でた趣味や特技を持っていれば、可能性は広がります。あなたは今、何か掛け算できるものを持っているでしょうか。もしあれば、さらに磨きをかけましょう、もしなければ、今から仕込みを始めることをお勧めします。

山田英夫(やまだ・ひでお)
早稲田大学ビジネススクール教授
慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了後、三菱総合研究所入社。大企業のコンサルティングに従事。1989年早稲田大学に移籍、現在に至る。専門は競争戦略、ビジネスモデル。学術博士(早大)。近著に『マルチプル・ワーカー:「複業」の時代』。
(構成=増田忠英 写真=AFLO)
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