石破派の山下貴司氏を法相に抜擢した狙い
当選3回で石破派の山下貴司氏を法相に抜擢した件についても触れておきたい。安倍氏は石破氏を処遇しない判断は揺るがなかったが、石破氏を支援した議員を1人も処遇しないと、さすがに党を分断することになりかねないと判断。最終的に1人入閣させることにしたようだ。
山下氏は、菅氏とも近く、石破派にあっては安倍氏の覚えもめでたい人物だ。石破派には山下氏より当選回数が上の「適齢期」議員も複数いるが、あえて若手を一本釣りすることで、石破支持勢力の中で足並みの乱れを誘おうという狙いもあるのだろう。
石破派から閣僚に起用したことで「党内融和に腐心した」という評価するマスコミもある。しかし、それは好意的に過ぎる。9月20日の総裁選で石破氏に投票したのは73人。全体の2割弱にあたる。この中で起用されたのは19人の閣僚では山下氏だけ。党役員の中枢部をみても石破氏に投票したとみられる議員は見当たらない。
「全員野球」とは程遠いことは、火を見るより明らか
総裁選が行われる直前の9月20日昼、安倍氏を支援する議員たちは都内のホテルに集まり結団式を行った。そこに集まって必勝祈願のカツカレーを食べたのは330人超。ところが、安倍氏の得票は329票で「誰が食い逃げをしたのか」と犯人捜しが行われたのは記憶に新しい。
今回の人事をみると、山下氏と公明党の石井啓一国土交通相を除けば、全員が「カツカレーを食べた」人たちだ。そんな「カツカレー組」による政権運営が「全員野球」とは程遠いことは、火を見るより明らかだ。
(写真=時事通信フォト)