安倍晋三首相の運気が、下降線を描いている。9月20日の党総裁選では3選を果たしたが、敗れた石破茂元幹事長の善戦ばかりに注目が集まった。26日の日米首脳会談では、貿易問題で大幅な譲歩を迫られた。そして「総裁選より重要」と言われた30日の沖縄県知事選では、自民、公明両党が全力を挙げて支援した候補が惨敗。一連の「不都合の連鎖」は、与党連携にも影を落としつつある――。
自民・公明は沖縄県知事選で屈辱的な惨敗
9月30日午後、東京都内で開かれた公明党大会。来賓として出席した安倍氏はあいさつで「私たちは5回連続、国政選挙で勝利することができました。その意味において、山口那津男代表は私にとって必勝のパートナーです。この勢いをかって来年の統一地方選挙、参院選挙も力を合わせていきたい」と力説すると、会場からは拍手が起こった。
だが、ちょうどそのころ、自民党幹部や首相周辺のもとには、投票が進む沖縄県知事選の出口調査結果が伝わっていた。出口調査とは、投票所の出口に報道機関の関係者が陣取り、投票を終えた有権者に「どちらに投票されましたか」と聞く調査。質問を受けた経験のある人も少なくないだろう。
報道各社の調査は、多少の誤差はあったが、いずれも20ポイントほどの差で、国政野党を中心にした「オール沖縄」が推す玉城デニー氏がリード。自民・公明両党らが支援する佐喜真淳候補の苦戦が伝えられていた。
投票の結果は玉城氏が39万6632票、佐喜真氏は31万6458票。出口調査の傾向とほぼ同じだった。玉城氏の得票は、沖縄県知事選では過去最多。メディアによっては投票が締め切られた午後8時に玉城氏の当確を打つところもあった。自公にとっては屈辱的な惨敗。
皮肉にも昼に「必勝のパートナー」を確認しあった日の夜、「必勝」シナリオが崩壊してしまったことになる。安倍氏は結果が判明した後、自民党幹部と電話で話し「残念だが仕方ない」とつぶやいた。