「風疹のない日本」は本当に実現できるのか

2014年に厚労省の専門委員会が、風疹の流行を防止する指針案をまとめている。

それによると、免疫のない成人男性らにワクチンを打つように働きかけ、東京オリンピックの2020年までに「風疹の流行がない日本」にする。風疹を制圧しようというわけだ。

厚労省によれば、2013年の風疹の患者数はその前年の6倍に当る1万4000人に上った。発生の報告が義務付けられた1999年以降、最多となった。

風疹に感染した妊婦から生まれた先天性風疹症候群の赤ちゃんは2012~14年にかけて45人にも上り、そのうち11人が死亡している。

日本から風疹をなくすことには大賛成だが、果たして制圧できるだろうか。

過去の感染症を振り返ると、確かに水疱性の発疹ができて高熱を出し、古来から「悪魔の病気」と恐れられてきたあの天然痘(疱瘡)は根絶することができた。

牛痘ウイルスによって人の体に抗体を作り出す方法、つまり種痘ワクチンが大きな効果を発揮したからである。

「感染症を制圧できない」と考えたほうがいい

その天然痘の根絶について触れておく。

1958年、WHO(世界保健機関)は世界から天然痘を根絶する計画を採択する。アフリカや南米などの熱帯地域の高温に耐えられるように種痘ワクチンを改良してその質を上げるとともに量を確保し、65年から根絶作戦をスタートした。

その結果、1977年10月26日に発病したアフリカのソマリアの青年を最後の患者として天然痘は姿を消した。

2年半後の80年5月、WHOは天然痘根絶を宣言し、83年にはこの10月26日を「天然痘根絶の日」と定めた。この成功で多くの研究者が「感染症は克服できる」と考えた。

しかしちょうどこのころ、エイズウイルス(HIV)が出てきた。1981年6月にエイズの最初の公式報告が米国疾病対策センター(CDC)発行の報告書に掲載され、その後エイズが全世界に広がっていった。

天然痘の制圧成功はレアケースだったのである。感染症を制圧することはできない、と考えたほうがいい。

制圧できないならばどうすればいいのか。日頃からの予防はもちろんのこと、ワクチンや抗ウイルス薬を使いながらウイルスや細菌をコントロールしてうまく感染症と付き合っていくしかない。

鳥インフルエンザを刎頸の友を擁護するために使う安倍首相に、この感染症との付き合い方が理解できるだろうか。はなはだ疑問である。