「はしか」の感染者はあっという間に100人超に
沖縄県での感染をきっかけにはしか(麻疹)が流行している。
感染力が非常に強く、インフルエンザの何倍ものスピードで次々と、感染していく。感染すると、風邪に似た症状が出て発熱し、全身に発疹が出る。脳に炎症が生じると、後遺症のまひが残る。1000人中、1人の割合で死者も出る。決して侮れない感染症である。
日本は2006年から小児を対象にワクチンの2回接種を行って免疫力を上げた。その結果、3年前にWHO(世界保健機関)から国内にはしかの土着ウイルスが存在しない「排除状態」と認められた。
ところが今回の流行である。台湾人観光客が沖縄県にウイルスを持ち込み、それが発端となって沖縄県だけでなく愛知県にまで広がり、免疫の不十分な人々が感染した。感染者はあっという間に100人を超えてしまった。台湾人観光客はタイで感染したらしい。
この事態に一部の新聞が社説で取り上げ、警鐘を鳴らしている。
日本国内にはしかのウイルスが存在しないからといって安心してはならない。はしかだけではない。2014年の夏には熱帯の東南アジアで流行するデング熱も都内で発生している。航空機によって世界中を手軽に移動できる現代は感染症は海外から持ち込まれる。
多くの研究者が「感染症は克服できる」と考えた
人類は感染症を制圧できるだろうか。
ここで過去の感染症を振り返ってみよう。水疱性の発疹ができて高熱を出し、古くから「悪魔の病気」と恐れられてきたあの天然痘(疱瘡)は根絶することはできた。
牛痘ウイルスによって人の体に抗体を作り出す方法、つまり種痘ワクチンが大きな効果を発揮したからだ。
1958年、WHO(世界保健機関)は世界から天然痘を根絶する計画を採択する。アフリカや南米などの熱帯地域の高温に耐えられるように種痘ワクチンを改良してその質を上げるとともに量を確保し、65年から根絶作戦をスタートした。
その結果、77年10月26日に発病したアフリカのソマリアの青年を最後の患者として天然痘は姿を消した。2年半後の80年5月、WHOは天然痘根絶を宣言し、83年にはこの10月26日を「天然痘根絶の日」と定めた。
この成功で多くの研究者が「感染症は克服できる」と考えた。