世界ではデング熱やジカ熱、マラリアも多発

読売新聞は産経新聞より早く、はしかを社説のテーマに選んでいる。その社説(5月6日付)の冒頭は「訪日客が持ち込む感染症への対策を徹底しなければならない」と書く。見出しは「最強の感染力に万全の備えを」だ。

産経社説同様、ワクチンの2回接種を呼び掛ける。「同様」というよりも産経社説が読売社説を読んでその書きぶりをまねたのだろう。社説は早く書いたほうの勝ちである。

「唯一の予防手段がワクチンだ。確実に免疫を得るには、2回の接種が推奨される。1回では免疫が十分に備わらない人もいる」
「幼少期などに定期接種を受けていない人や、麻疹の罹患歴がなく、ワクチン接種の有無が不明な人は接種を検討すべきだろう」

最後に読売社説は、沙鴎一歩が前述した「感染症は海外から持ち込まれる」ことを指摘している。

「麻疹だけでなく、世界では、デング熱やジカ熱、マラリアなどの感染症が多発している。国境を越えて人が活発に往来する現在、病原体が国内に入り込むリスクは確実に高まっている」
「誰もが感染症のリスクを自覚する必要がある。政府は空港などでの水際対策に全力を挙げたい」

読売社説の通りなのだが、水際対策にも限界はある。

「ネット経由」を裏付けるデータはない

読売は5月14日付社説で「梅毒」もテーマに選択している。感染症の問題を得意とする論説委員がいるのだろう。

「梅毒の患者数が爆発的に増えている。特に、若い女性や胎児への感染拡大が心配だ。厚生労働省は、効果的な対策を講じねばならない」と書き出し、「2012年に875人だった患者数は昨年、5820人(暫定値)に上った。5000人を突破したのは、実に44年ぶりだ」と指摘する。

梅毒は「過去の病気」とされてきた。それだけに梅毒をその症状から診断できない医師もいる。

読売社説は「典型症状として、感染から3か月程度で手足など全身に発疹が現れる。その後、発症したり治まったりを繰り返す。進行すると脳や心臓に異常を来すこともある」「主に性行為を介して感染する。男性の同性愛者や性風俗関連の女性に多いとみられてきた」とその症状を丁寧に説明する。

さらに「懸念されるのは、20~30歳代の女性への感染が目立つことだ」と書き、「原因については、様々な指摘がある。『ネット経由で男女の出会いが多様化した』『海外との往来が活発になった』などといわれるが、裏付けるデータはない」と解説する。

そのうえで感染の実態把握を強化するように厚労省に求めた後、次のように主張する。

「無論、重要なのは、一人ひとりが予防に努めることだ」
「罹患が疑われれば、病院や保健所などで検査を受けて、速やかに治療する。原因となる細菌『梅毒トレポネーマ』は、基本的に抗生物質の服用で死滅できる」
「治癒した後も免疫ができないため、再感染には注意を要する。パートナー間での感染リスクを避けるためには、一緒に検査を受けることも必要だろう」

感染症をテーマした社説としてはまずまずの出来だろう。