株、不動産の次に美術品が買われる

美術品価格の高騰と、量的緩和政策の関係

近年、美術品の価格が全般に高騰しています。これは世界的な量的緩和政策によるものです。お金が余るとまず株が買われ、次に不動産が買われ、最後に美術品が買われる。これまで幾度となく繰り返されてきた、マネーの流れです。

東京画廊 代表取締役社長 山本豊津氏

量的緩和でお金の価値が下がると、資産家は資金をモノに換えて価値の保全を図ろうとします。それには価値がなるべく凝縮して、容易に分散されないモノがいい。

だが、例えば10億円の金塊だと重さが約200キログラムもあって保管も移動も難しい。盗まれて溶かされたら最後、絶対に出てはきません。

けれども例えば絵画なら、10億円する作品でも1人で持ち運べる大きさ・重さで、壁に掛けていつでも眺めることができる。盗まれる可能性はあるが切り分けることはできないし、換金すればすぐに足がつきます。

もうひとつ投資対象として好都合なのは、美術品には眺める以外に具体的な「使用価値」がないことです。何かに“使える”うちは、それが価値の算定基準になるからです。

ところが、完全に「使用価値」を失ったモノには「交換価値」が生まれ、価値の算定基準から解放される。そうすると、価格が青天井に吊り上がる可能性が生まれるのですね。

現在、世界の美術品市場は年間6兆円規模と言われています。世界でたったこれだけなのは、プレーヤーがまだ圧倒的に少ないからです。

しかし、その市場は確実に広がっています。少し前まで生活を成り立たせるのに精一杯だった国の人たちが、経済成長で豊かになり、家を買い、車を買い、宝飾品を買って、最後に美術品を求めるようになる。

例えば、中国の富裕層がこぞって美術品を買うようになりました。これだけでもの凄いインパクトです。美術品市場はまだまだ成長するでしょう。

画商は作家を追求し、コンテクストを探る

さて、美術品市場には「セカンダリー」と「プライマリー」があります。前者は誰かに所有されていた作品が転売される取引で、後者は作者から直接あるいは画商等を通じて初めて買い手に渡る取引です。

セカンダリーは過去の実績やオークションで値段が決まるので、価格形成の過程が比較的わかりやすいのですが、プライマリーだと作品そのものの価値を理解する必要があります。

とはいえ、よほど美術に精通した人でなければ、見ただけで作品の価値はわからない。そこで画商が作者の人物像や生きざま、創作の意図や美術史における意義を説明するのです。