経済ニュースの本質を見極めるにはどうすればいいか。役立つのが「会計」だ。会計ではモノの動きと時間の流れを「金額」で整理していく。それが理解できると「ウラの裏」がするすると見えてくる。雑誌「プレジデント」(2018年3月19日号)の特集「会社の数字、お金のカラクリ」から、記事の一部を紹介しよう。今回は「東芝とブックビルディング」について――。

粉飾決算の分析の第一人者が見た「東芝」の第三者割当増資

「異例ずくめの増資だった」と金融関係者にいわしめたのは、東芝が2017年12月5日払い込みで行った約6000億円の第三者割当増資だ。新規に発行する株数は発行済み株数の53.8%も占め、既存の株主の権利は大幅に低下。「それでも増資をする必要があった」と指摘するのが、元公認会計士で粉飾決算の分析で第一人者でもある細野祐二さんである。

東芝は米国の原発子会社ウエスチングハウス(WH)と同グループの再生手続きによる損失など1兆2428億円を計上し、17年3月期に5529億円の債務超過へ(図参照)。「18年3月期末までに債務超過を解消しないと上場廃止になる。回避策で半導体子会社の東芝メモリの売却があったのだが、なかなか前に進まず、増資が浮上したのだろう」と細野さんはいう。

※「ブックビルディング」とは
増資する会社の発行価格を決定する方式の1つ。まず機関投資家の意見をもとに仮条件を決め、その条件を広く投資家に示し、需要を把握しながら発行価格を決めていく。