手が足りない中小企業の営業を支援する会社を起業
ところが、2010年の54歳のときに転機が訪れる。業界再編のあおりで、勤めていた先物取引会社が廃業してしまったのだ。営業本部長に昇進していた齋藤さんは、同業他社から好条件で誘われた。だが、「家庭を顧みない仕事優先の生活だったので、妻から『先物取引の世界からは、もう身を引いて』と懇願され、そのスカウト話は断りました」と齋藤さんはいう。
充電期間中に知人からすすめられたのがきっかけで翌11年、人手が足りない中小企業などの営業を支援する「マグネット24」を、たった1人の自営型起業の形で設立。齋藤さんは世話好きな性格で、「異業種交流会で知り合った人に頼まれ、お得意先を紹介したりしていたのですが、『それは立派なビジネスになるよ』といわれたのです」(齋藤さん)。成約した場合、利益の50%を受け取る成功報酬制のため、委託元の企業にリスクがないのも利点。委託元の担当者を必ず同席させるので、「若手営業マンの育成にも役立つ」と好評だ。
「営業のノウハウは机上ではなく、現場でしか教えることができません。お客さまを“説得”するのではなく、相手の心に刺さるフレーズで、商品価値を“納得”してもらうのが営業のキモ。同行する営業マンには、『私と話しているお客さまの表情が、どう変わるかチェックして』といっています」(同)
齋藤さんは現在、6社と顧問契約を結び、これまで担当した商品も100種類以上に上る。たとえば、厨房などの廃油や生ゴミが下水に流れないようにためる装置であるグリーストラップが簡単に洗浄できる特殊薬剤を、ホテルや病院などの約30カ所に売り込んだ実績がある。
(撮影=加々美義人)