やはり、複数の民間試験を同列に評価する手法に問題はないのか。

「たとえば、上智大学などは、TEAPを日本英語検定協会と共同開発し、TEAPの基準スコアを満たせば、入試の英語を受ける必要がないという、TEAP利用型入試を導入しています。同様の入試制度を取り入れる私立大学は徐々に広がっています。そうした動きを見ると、あまりにも幅広く民間検定のどれを受けてもOKという形は、大学側は避けたいのでは」(三石氏)

「入学後にTOEFLやTOEICを重視している大学なら、せっかく入試で民間試験を活用するというなら、それらに限って課すという判断が尊重されてもいいはずです。しかし、対象とする民間試験を絞ると、受験生が集まらないというジレンマも生じる。また受験機会の公平性などを考えると、文科省としても困る局面となるのかも」(渡辺氏)

“そのとき”になってみないとわからない

こんな状況下で、将来の受験生は英語とどう向き合うべきなのか。

「東大・京大をはじめ上位の大学は、すでにTOEFLなどにより英語の4技能を評価基準に採用しています。意識の高い学校や学生は、今までどおり4技能を重視していくはずです。社会に出てから、『自分は4技能選抜の前の人間だから、英語ができなくても会社は織り込み済みのはず』とはなりません。これからの国際化時代を生きていく中で、負けたくない学生、活躍したい学生は、4技能を習得したいというマインドを持ち続けてほしいですね」(三石氏)

過渡期を過ぎた24年度以降に、民間試験へ全面移行するという構想が現実的なのかどうかについても、「“そのとき”になってみないとわかりません」(渡辺氏)と疑問は膨らむばかりだが、三石氏はあくまで4技能試験に期待する。

「ゆとり教育であれだけバッシングを受けたのに、文科省はさらなる大改革に挑もうとしているわけです。英語の4技能試験を見切り発車だと非難する声もありますが、私は大英断だと捉えています。多くの問題をはらみながらも、着実に実行に移してほしいと願っています」(三石氏)

とはいえ、効率的に、確実に“合格”を手に入れたい受験生にとっては、不安や戸惑いも残る。

「今は、農業でも中小企業でも外国とのつながりが欠かせない時代。志を高く持って“使える英語”を身につければ、将来、必ず役立つときがやってきます。“受験”に惑わされず、自分のために英語と向き合ってほしいです」(三石氏)

渡辺敦司
教育ジャーナリスト
1964年、北海道生まれ。90年横浜国立大学教育学部教育学科卒業、日本教育新聞入社。98年よりフリー。主に教育の専門誌や専門サイトで、連載や執筆活動を継続中。
 

三石郷史
キャタル社長
1974年生まれ。98年慶應義塾大学経済学部卒業。外資系証券を経て2002年「英語塾キャタル」、10年「英会話教室バイリンガルFM」開校。著書に『頭を使わない英語勉強法』。
 
(撮影=初沢亜利、石橋素幸 画像提供=国際教育交換協議会(CIEE)日本代表部 写真=iStock.com)
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