肥満、高血圧……「運動不足」は老後医療費アップに直結
生活習慣にかかわるもうひとつの病気が高血圧症だ。過去10年間、ずっと高血圧だった人がそれ以降に支払っている医療費は、高血圧ではなかった人よりも1年間に約3万円も多い(図4)。だが、生活習慣を見直すと、医療費が抑えられて家計も改善される。不健康な生活習慣によって抱えるリスクには「肥満」「高血圧」「高脂血症」「高血糖」が挙げられるが、リスク要因が多いほど医療費も増えていく。リスクが1つから4つに増えると10年後の医療費は年間約3万円増える(図5)。
リスクを減らしていくためには生活習慣の見直しが必要だが、糖質を抑えた食生活や禁煙のほか、運動の習慣もつけたいもの。運動する回数を週1回から2回に増やすだけで病院への受診が1%減少する。さらに、1日1時間以上歩くと5年で約5万円医療費が減るという試算もある(図6)。
こうした疾病は生活習慣のほか、遺伝や社会環境も大きく関係する。生活習慣さえ見直せば病気にならないわけではないが、早期に手を打っておけば症状の悪化を抑え、老後の医療費増大を抑える可能性はある。グッドな老後を送りたいなら、まずは1日1時間のウオーキングを始めてみてはいかがだろうか。
古川 雅一
東京大学大学院特任准教授
1967年、奈良県生まれ。京都大学大学院経済学研究科修了。京都大学経済研究所、立教大学を経て現職。経済学博士。専門は公共政策、社会保障、行動経済学。著書に『わかっちゃいるけど、痩せられない』ほか。
東京大学大学院特任准教授
1967年、奈良県生まれ。京都大学大学院経済学研究科修了。京都大学経済研究所、立教大学を経て現職。経済学博士。専門は公共政策、社会保障、行動経済学。著書に『わかっちゃいるけど、痩せられない』ほか。
(構成=早川幸子 撮影=石橋素幸 写真=iStock.com)