※本稿は、高橋研『AIに駆逐されない営業力 実践!インサイトセールス』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
1.アポの目的を正しく伝える
第1のポイントは、目的を正しく伝えることです。「御社の経営トップにお会いできないでしょうか。目的は、弊社の商品のご提案に先立って、経営トップの経営におけるご意向、ご意思を直接うかがうことです」とストレートに目的を伝えましょう。
一番よくないのは、「ご挨拶に伺わせてください」「一度、お顔合わせを」といった曖昧な言い方です。昨今、どこの会社も忙しく、「ご挨拶のような儀礼的なことはご遠慮申し上げます」というところが顕著に増えています。理由は、挨拶という行為に対する価値評価が低下しているからでしょう。その背景は、人間関係の構築より経済的合理性を重要視する時代となっていることがあると思われます。
だからこそ、漠然と「お時間をいただければ」という曖昧で遠慮がちな申し込みでなく、会うことがどういう意味を持ち、何を得られるのか、目的をはっきり伝えることが必要なのです。
2.顧客側の担当者を巻き込む
第2のコツは、お客様側の担当者を巻き込むことです。秘書室などに直接連絡するのではなく、必ず自分のカウンターパートに話を通すのです。担当者の立場からすれば、自分の知らないところで頭越しに上層部と連絡を取られるのは非常に不都合で不愉快なはずです。
実務上から見ても、ある程度以上の規模の企業なら、通常は担当者を通じた連絡という形になるでしょうが、その際に、単に連絡役を務めてもらうのではなく、「担当者を巻き込む」ことが大切なのです。
例えば、「Aさん(相手担当者)への商品ご提案に先立って、御社社長の経営のご意向や戦略、また、現在大切にしようと考えていらっしゃることを、直接伺うことは可能ですか。ご提案の方向性がブレずに済み、Aさんのお仕事がしやすくなるのではとも思いますが、いかがでしょうか」という言い方で、アポ取りの仲介を依頼するわけです。
「こういうメリットがAさんにもありますよ」と端的に伝える。それが「巻き込む」の意味です。現場の担当者にとって、自社の経営者の話をじっくり聞ける機会は決して多くないはずです。傍聴とはいえ、その場に同席できるならと、こちらの依頼に力を貸してくれることでしょう。
単に経営トップに会わせてほしいと頼んでも、担当者の反応は「なぜそんなことが必要なのですか」となってしまうに違いありません。だからこそ、Aさんにとっても価値のある話であることを強調して、巻き込んでいくことが大切なのです。