自らのブログで「『祝意』に関して」という文章を発表

5月20日、パルムドール受賞が報じられ、作品認知が飛躍的に高まりました。テレビのワイドショーでも大々的に取り上げられるようになりました。

5月23日、帰国した是枝監督が羽田空港で記者会見を行い、報道はさらに加熱。受賞の結果、公開館数が200館規模から300館規模に拡大することも発表されました。

6月2日、3日の2日間、全国325の映画館で先行上映が行われました。ここでいち早く鑑賞した観客が、本公開までの間に感想を拡散することとなります。

6月7日、林芳正文部科学相が、国会で「政府は是枝監督を祝福しないのか」と質問され、「是枝監督を文科省に招いて祝意を伝えたい」という考えを示しました。その後、是枝監督は自らのブログに「『祝意』に関して」という文章を発表。そこに「受賞直後からいくつかの団体や自治体から今回の受賞を顕彰したいのだが、という問い合わせを頂きました。有り難いのですが現在まで全てお断りさせて頂いております」と書かれていたことから、是枝監督の対応についてネット上でさまざまな意見が飛び交います。

(c)2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.

6月8日、公開初日(本公開)を迎えます。

6月9日、伊勢崎市議会議員の伊藤純子氏が、ツイッターで「是枝監督の『公権力から潔く距離を保つ』発言には呆れた。映画製作のために、文科省から補助金を受けておきながら、それはないだろう」と発言し、物議を醸します。

こうして振り返ると、カンヌ映画祭から公開までの約3週間、『万引き家族』は多くの議論を引き出す触媒として機能し、その熱量が最高潮に達したところで、満を持して本公開となりました。この結果、「いま観ておくべき、ニュース性の高い作品」として動員に成功したのです。

是枝監督が抱いた「強い違和感」の正体

ただ、ニュース性だけで何週間も動員を維持できるほど映画興行は甘くありません。鑑賞した人たちが、周囲に積極的に「おすすめ」しなければ、「4週間で30億円以上」という数字は達成できないのです。

※以下、作品の結末に関わる記述があります。

多くの人にとって本作の興味喚起の入り口は、前述のニュース性と、「貧困家族が万引きで生活をしのぐ」といった“おもしろそうな”設定でした。しかし実際に鑑賞してみると、事前の宣伝では巧妙に隠されていた事実が観客を驚かせます。実は、彼ら5人は本当の家族ではありませんでした。まったくの他人同士だったのです。この事実の開示をもって、『万引き家族』は観客に強烈な問いを投げかけます。

5人は血がつながっていないにもかかわらず、血のつながった家族以上に絆が強く、幸せそうなのはなぜなのか――。

是枝監督は、筆者が原稿を構成したリリー・フランキーさんとの対談(「週刊SPA!」6/12・19号)で、こんなことを語っています。

「東日本大震災の後にやたら『絆、絆』って世の中で言われていて、強い違和感を感じた」
「血のつながり以外に広げなきゃいけなかったはずなのに、結局『やっぱり家族だよね』に回帰してしまった世間のムードがすごく気になった」

この発言からもわかるように、本作には「血縁関係だけが幸せなコミュニティの形とは限らない」という強い主張が込められているのです。