たくさん投げて走って結果を出した選手が偉い

NPB(日本プロ野球機構)の12球団でトレーナーを務めたことがあるB氏は、「日本野球界のトレーニングは旧態依然で何も変わらない」とこぼす。

張本氏が出演しているのは「サンデーモーニング」(TBS系、日曜朝8時~)のスポーツコーナー「週刊御意見番」。

B氏らトレーナー陣が、運動生理学に基づいたトレーニングメニューを提案しても、元プロ野球選手である1軍のコーチに断られてしまうのだという。B氏は「言葉が通じないくらい。彼らの中では勝手な理論が完結しているんです」と憤る。

「日本のプロ野球界には、たくさん投げて、たくさん走る。その中で結果を出した選手が偉いという文化があるように感じます。彼らは自分たちがやってきたものと同じことをやらせたがる。だから、トレーニングが昔からあまり変わらないんです。そして、スパイクを履いてダッシュすると、スパイクの歯が地面に引っかかることにより、ガッと踏ん張るので、ガツンとパワーがつくと心底信じている。ただ、長い時間の練習では脚が疲れるので、アップ(準備運動)のランニングは歯が地面をさほど噛まないサッカーのスパイクでやる選手もいるんです」

野球の「走り込み」は、扇形の外野の右翼ポールと左翼ポールを走るメニューが中心だ。6~7割のスピードで、PP(ポールからポール)なら10~12本、PC(ポールからセンター)なら20本ほど。他にも10m置きにコーンを置いて、10mの往復、20mの往復、30mの往復、40mの往復ダッシュなどをこなすという。

▼専門家「投げ込みと走り込みをやめて、ウエイトトレするほうがいい」

こうしたトレーニングがピッチングに本当に役立つのだろうか。B氏は、「日本の野球界は投げ込みと走り込みをやめて、専門家にプログラムを立ててもらって、ウエイトトレーニングをするほうがいい」と話す。

「投手がボールを投げる時間は、脚を上げてから1秒ほどです。それなのに、走るメニューは明らかに運動時間が長い。科学的に考えても、エネルギー代謝のメカニズムが違いますし、トレーニングの整合性はありません。投手に有効なのはウエイトトレーニングです。ピッチングに必要な筋力をつけることで球速がアップしますし、故障の予防にもつながるはずです」