時代に応じて「つながり」は変わっていく
しかし、多くの人はこういった人間関係を保つのが難しくなったと感じているようです。内閣府の調査では、実に6割以上の人たちが「人間関係が難しくなった」と回答しています。
その理由を見てみると、「地域のつながりの希薄化(54.3%)」「核家族化(41.8%)」「親子関係の希薄化(32.3%)」「職場環境の悪化(11.6%)」「兄弟姉妹の不在(11.3%)」など、縁にまつわるものが多く挙げられています(図2)。まさに血縁、地縁、社縁が変化してきていることが分かります。
これらに取って代わり、現代でウエイトが置かれているつながりが、共通の趣味や関心、目的によって作られるつながりです。例えば、ママたちが集まる子育てサークルや、マラソン好きが一緒に練習するようなランニングの会がそうです。いわゆる飲み仲間なんていうのもこれに当てはまります。
また、インターネット上のつながりも忘れることはできません。ツイッター、フェイスブック、ラインに代表されるようなSNSを利用している人は多いと思います。スマホが普及した現代では、つながりづくりになくてはならないものになりつつあります。
SNSの利用者数は年々増加しており、2017年度末にはおおよそ7200万人と報告されています。実に人口の半分以上が利用している計算です。
こうやって見てみると、改めて私たちは色々なつながりを持ちながら日常を過ごしていることが分かります。確かに、人付き合いを煩わしく感じてしまう時もあります。しかし、私たちは、時代に応じて新しいつながりを作りながら生きているのです。
太った人の友達の半分は太っている
つながりが健康にもたらす影響力を示した別の研究を紹介します。
ハーバード大学の元教授であるニコラス・クリスタキスは、アメリカのフラミンガム心臓研究という世界的に有名な調査のデータを用い、5000人以上の人が持つつながりを分析しました。その結果、驚くべき「肥満の秘密」が明らかになったのです。
・Bの友達であるCは、Aと直接関係がなくても20%の確率で肥満になる。
・さらに、Cの友達であるDは、AとBと直接関係がなくても10%の確率で肥満になる。
つまりAとC、Dは直接知り合いでなくても、A→B→Cは20%、A→B→C→Dは10%の確率で肥満になるということです。この確率は統計学的に検討しても、ただの偶然に起こっただけとは考えにくいものでした。この結果をどう解釈すればよいでしょうか?
そうです。肥満はつながりを介してどんどんと「伝染」していくのです。
「肥満が伝染するなんて聞いたことがない」といいたい気持ちも分かります。もちろん、肥満はインフルエンザのようにウイルスや病原菌によって罹るわけではありません。
しかし、フラミンガム心臓研究では、実際に人から人へと伝染していました。どうやって肥満は伝染していったのでしょうか?
「この人も食べているし、問題ないんじゃないか」
理由の1つに、肥満の人が近い関係にいると、その人の考えや行動様式に影響されやすいことが挙げられます。これをクリスタキスは「行動の模倣」と呼びました。