禁煙、禁酒、適度な運動……。どれも健康にいいとわかっているが、続けるのは簡単ではない。そこで朗報がある。最新の調査で、健康や長寿の決め手は、もっと別な要因であることがわかってきたのだ。村山洋史・東京大学高齢社会総合研究機構特任講師によれば、それは「社会とのつながり」だ。あなたの健康を左右する「つながり」のおそるべき力とは――。

※本稿は、村山洋史『「つながり」と健康格差』(ポプラ新書)の一部を再編集したものです。

長生きできるライフスタイルとは何か?

これまで、多くの研究者が疫学研究によって、「長生きするためのライフスタイルは何なのか?」という疑問に取り組んできました。2010年、それまでの関連する研究結果を統合して、「結局、どのライフスタイルが一番長寿に影響しているのか」をまとめた論文が出版されました。

図1はその結果です。グラフの棒が長いほど、長寿に強い関連を持っていることを意味します。タバコを吸わない、アルコールを飲みすぎない、運動する、太りすぎないといったライフスタイルが健康や長生きに良いのは誰でも知っていますし、皆さんも納得できると思います。しかし、それら以上に長寿に影響するライフスタイルがあったのです。それが「社会とのつながりを持つこと」でした。

この結果は、我々研究者にも大きな衝撃を与えました。社会とのつながりを持っていることは、長生きや健康に良い影響を持つことは知られていました。しかし、まさか喫煙、飲酒、運動、体格指数といった、いわゆるライフスタイルの王道よりも影響が強いとまでは思っていなかったからです。

しかし、ものは捉えようです。禁煙、禁酒、運動、ダイエットが長生きや健康につながるといわれても、それらに取り組むのはなかなか難しいものです。しかし、「普段の生活の中でのつながりが長生きや健康に良い影響を与えています」といわれると、すでに多くの人が持っているものですし、何となく安心できます。

血縁、地縁、社縁。これらに代表されるように、私たちは例外なく様々な縁、すなわち「つながり」に囲まれて生活しています。

実際に、「困ったことがあった時、家族に頼って助けてもらった」「隣の家の人が自分の家の前を掃除してくれていた」「仕事で失敗した時に同僚に励ましてもらった」「大学の時の同級生に彼女を紹介してもらった」など、これらの縁に助けられた経験は誰にでも多少なりともあることでしょう。