――粘り強く努力できる人と、できない人。どこで見分けられますか。

採用面接では、正解のない質問をぶつけて、不測の事態に強いかどうかを見ます。いまの若い人は勉強熱心で、面接では耳に心地のいいことを話してくれます。たとえば「学生時代はバイトに明け暮れて、こんなお客様に出会って成長した」とかね。でも、面接マニュアルに模範回答が書いてあるようなやりとりをしても仕方がない。だから「どんな色が好き?」「きみの名前の由来は?」と質問して、反応を見ます。

べつに間違い探しじゃないから、何を言ったっていい。アドリブでその人なりの回答を聞きたい。ただ、目が泳ぐ人はダメです。子どものころ適当なことを言って、母親から「目がウソって言ってる」と見透かされたことはありませんか。人間の本音は目に出ます。目が泳ぐのは、不測の事態から逃げようとしている証拠。逆に真っすぐに見返してくる人は、逃げない人だと感じます。

――芳井社長の仕事人生の中で、自分の成長を実感できたのはどんな時期でしょうか。

私は経営幹部を育成する「大和ハウス塾」の1期生。選ばれたとき、現会長の樋口に、「きみたちを選んだのは過去を評価したから。しかし、将来が保証されたわけではない」と言われました。この言葉が好きでね。人はつねに新しい気持ちで自己成長しなければいけない、と胸に刻みました。

振り返ると、転職したときは新しい気持ちで素直に頑張れたと思います。前職は違う職種なので、仕事のやり方はまったく違います。しかも先輩は年下ばかりです。ただ、前職のキャリアや年齢を引きずっていたら成長はない。新しい職場では基礎から学ぶ必要があるのだから、他の1年生と一緒に朝早く来て掃除からやりました。おかげで先輩からもいろいろ教えてもらえました。