「健康は自己責任」風潮も後押し

「東京マラソン」の翌年、2008年4月には厚生労働省が推進する「特定健診・特定保健指導」が始まった。日本人の死亡原因の約6割を占める生活習慣病予防のために、「40歳から74歳までを対象に、メタボリックシンドロームに着目した健診」を国が勧めたのだ。

これ以降、“メタボ”という言葉が一般的となり、商機と見込んだメーカーや小売りなどから、さまざまな健康対策の仕掛けも行われた。「自己責任」と「健康志向」が結びつき、「健康は自己責任」意識もさらに高まったのだ。

別の調査結果も紹介したい。ランニングポータルサイト「RUNNET」が行った「ランナー世論調査2017」(回答者数1万7868人)によれば、ランニングを始めたきっかけ(複数回答)は、以下となっている。

・「運動不足解消」=55.3%
・「健康のため」(減量でない)=41.0%
・「ダイエット」(減量)=33.8%
・「レースに出場したいから」=28.1%
・「ストレス解消のため」=25.6%

こうした意識と各業界の仕掛けが合わさり、ランニング人口が急拡大していった。

「仲間」がいないと続けにくい

それが、なぜここまで減ったのか。前述の数字で紹介したように“真剣派ランナー”と“お試し派ランナー”の意識の違いも大きいのだろう。先日、こんな話も聞いた。

「身体を動かすのが好きで時々走ります。でも冬は寒いし、重厚なウエアを揃えてまではやりません。Tシャツと短パンでできる時季だけです」(東京都の40代男性会社員)

ふつうのランナーは、この意見に象徴されるようだ。球技とは違い、1人で始められる代わりに、やりたくなければ走らないですむ。どの市民スポーツ種目でもそうだが、総じて“真剣派”は地域のスポーツクラブに所属し、“お試し派”は所属しない。もちろん「1日体験会」でハマった人が真剣派に変わることも多い。

前述の「地方の男性ほど走らない人が増えた」も考えてみよう。

小都市や町村部は、スポーツクラブが少なく、仲間をつくりづらい。特に女性に比べて、男性は孤立しがちだ。筆者は水泳を20年以上続けて大会に参加してきたが、クラブに属して仲間と交流すると濃密な情報も入る。一定情報はネットで収集できるが、「あの大会の会場は、ここが走りやすい(泳ぎやすい)」といった細かい情報は入手しにくい。

「大会」というと大げさに聞こえるが、音楽や美術でいえば「発表会」や「展示会」に相当し、日頃の練習の成果を披露する舞台だ。1人でランニングを楽しむ人は、良くも悪くも仲間や大会といった“縛り”がないので、よほど意志が強くないと継続しにくい。