一段落した「ランニングブーム」
真夏の時季でも、毎週のように各地で開催されている「市民マラソン大会」。2007年の「東京マラソン」をきっかけにランニング人口は増え続けていたが、実は「地方在住の40~50代男性」を中心に、このブームが一段落したようだ。
「スポーツライフに関する調査報告書」をまとめた笹川スポーツ財団によれば、2016年にジョギング・ランニングを年1回以上した人の数は推計で893万人だった(※)。前回の2014年調査は986万人、2012年調査では過去最高の1009万人で、これで2回連続の減少となる。つまり4年で100万人以上がジョギング・ランニングをやめてしまったことになる。2012年と2016年を比べると、40~50代男性で地方在住者の減少が目立つ。
※編注:笹川スポーツ財団の推計では、全体の人数と男女の合計が一致しないため、グラフでは男女の合計を編集部で再計算した。文中の数字は財団の推計値のままとしている。
「ランニング人口はそんなにいるの?」と思うかもしれない。この調査では、もっと本格的な「週2回以上の人」についても推計している。こちらもピークは2012年の385万人で、2014年は374万人、2016年は364万人と減っている。ただし「年1回以上」に比べると、落ち込みはゆるやかだ。
つまり、「ランニング離れ」は“真剣派ランナー”ではなく、“お試し派ランナー”で起きていると推察できる。この現象は、以下で紹介する数字と併せて考えると、非常に興味深い。
「東京マラソン」に触発されて始めた人
「ランニング人気」が高まったのは、2007年からといえる。この年、リニューアルされた第1回「東京マラソン」(前身は1981年~2006年まで実施された「東京国際マラソン」)が開催され、多くの一般ランナーが首都の公道を走る姿が話題となった。以来、全国各地で市民マラソン大会やランニング大会が激増した。
陸上大会の関係者によると、「10年前の大会数は約800。それが現在ではネット上に登録のある大会だけで約1800。小さな大会を合わせると約2800」となっている。
これほどマラソン大会は増えたのに、なぜランナーは減っているのか。まずはスポーツマーケティングの視点で、次の2つに分けて考えてみよう。
(1)Do Sports(やるスポーツ)
(2)See Sports(見るスポーツ)
この2つは時に連動もする。「東京マラソン」で市民ランナーが楽しく走る姿を見た、一定数の人が、自分もやってみようと始めたのだろう。他の種目に比べて初期投資費用が安く、手軽に始められるなど敷居の低さもある。ランニングは、最も(2)を見て、(1)になりやすい種目といえる。ウォーキングから始め、ジョギング→ランニングと進むことも可能だ。
人気を呼べばメディアも取り上げる。当時、筆者が寄稿していた大手ビジネス誌からも「ランニング本」が刊行されて売れた。同編集部にはランニングチームも結成されたそうだ。