端末内の個人情報や業務データ喪失の損害負担は?

では、携帯端末に記録されている個人情報や、業務に関わるデータ類の喪失による損害はどうか。特に個人情報が抜き取られて流出した場合、顧客や取引先からの賠償請求や、会社の信用低下にともなう売上減などの損害が想定される。

故意に個人情報を漏えい(情報窃盗)した社員への賠償請求が、会社が主張した全額を認められた事例はある。しかし、うっかりミスの事例はなかなか見当たらない。おそらく、個人情報漏えいによる賠償額が多額となるため、一社員に請求しても費用倒れになると考えられているからだと思われる。

今後の裁判では、先のタンクローリーの件の判決を援用していくことになろう。裁判官は本人以外が開けぬよう会社側が端末にロックをかけていたか否かや、社内研修など業務管理の中身を考慮するだろうし、それによって社員の分担額も変わる。社員自身のロックの有無も分担額に影響するだろう。

※NPO日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)「2016年 情報セキュリティインシデントに関する調査報告書~個人情報漏えい編~」計468件の内訳
住川佳祐
QUEST法律事務所 代表弁護士
1988年、大阪府生まれ。2017年QUEST法律事務所開設。労働問題について記載するメディア「ハタラクエスト」を運営。東京弁護士会所属。
 
(構成=高橋盛男 撮影=石橋素幸 写真=iStock.com)
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