もう1つの方法が、多彩な動作をすべて自動化するのではなく、機能を絞って自動化し、間あいだに入るすき間作業を人間が請け負う、という形の省力化だ。ただ、この流れはすでにだいぶ進んでおり、今後、ブレークスルーが起きるというよりは、過去からの連続線上での小さな変化の連続でしかない。
たとえば、回転寿司であれば、すでに「握り」はロボットに任せている。人間はそれにネタをのせるだけだ。ネタにより調味料や装飾が異なるから、そうした「すき間作業」を人が請け負う。食器洗いも食洗機があり、現在人が請け負うのは、その食洗機の稼働効率を上げるよう、入れる順番や詰め込み方を工夫する部分だ。
AI化が加わることで、こうした地道なメカトロの進歩が促されることになる。たとえば、ネタごとに包丁の入れ方が異なるため、現在ではそれを人が行っている。今後はAIセンサーにより最適なカットが自動でなされるようになっていくだろう。そこまでいくと、人は、皮をはぐ、とか湯引きをする、といったすき間作業だけを任されるようになる。
同様に、現在、顧客をテーブルまでアテンドするのは人が行っている。それは、うまく着席位置を寄せて、寿司レーンを有効活用するためだ。そうしたノウハウもAIには向いている。すると今後は、顧客をどの位置に並べるかはすべて機械が考え、実際の誘導という「すき間作業」だけ人が受け持つことになる。
ネタの仕入れもAIができるようになる未来
また、現在でもネタの仕入れは、季節・天気・前年傾向などからコンピュータが考えるようになっているが、そこに店長自らが読みを加えて最終発注している。たとえば、近くで大きなイベントがあるとか、道路工事で渋滞ができてその待ち合いで来客が増えている、などと読むのだ。こうした「読み」さえも、AIならネット上で地域情報や交通情報を集め、またPOSデータから来客層の流れを読み、簡単に代替してしまうだろう。
この流れをまとめると、こんな風になる。
20年もすれば、汎用ロボットが登場し、流通サービス業の雇用は革命的に変わる。ただ、それまでは、メカトロニクスとAIの地道な進歩で、小さな変化が連続的に起こる。その小さな進歩は、今まで「属人的ノウハウ」とされていたことが機械化されていくプロセスであり、結果、人手はすき間作業へ集中するようになっていく。