2人の失脚おじさんはSNSの威力を軽視していた

そもそも、人が日々の生活で想像力を働かせるのは、そうしなければ困る弱い立場にあるからだ。上司や先輩などの目上の人、取引先、妻や恋人などの反感を買ったらどうしよう、怒らせたらどうしようなどと気にせざるをえない立場だからこそ、相手の反応を想像する。そして、自分が困るような反応が返ってきそうだったら、わが身を守るために言動を慎む。

一方、特権的な地位にいて、少々のことは許される立場であれば、そんなことを気にする必要はない。必要がなければ、想像力を働かせるという面倒くさいことはしないのが人間という生き物だ。自分の立場がまだ弱かった頃は想像力をある程度働かせていた人でも、相手の反応や感情を気にする必要のない立場になれば、想像するのをやめてしまう。

だから、福田氏も内田氏も、自分の言動が大衆の反感と怒りをどれほどかき立てるかも、批判をどれほど浴びるかも想像できないのは当然だ。いや、そもそも想像してみようとさえしないだろう。

「週刊文春」6月7日号より
(4)甘い現状認識

甘い現状認識のせいで墓穴を掘る点でも共通している。これは、主に(2)強い特権意識のせいだと考えられる。どうしても、自分の権力と影響力を過信してしまい、反感、怒り、批判などのネガティブな反応が返ってくることを予想できない。

また、ネガティブな反応もそのうち収まるだろうと楽観的に考え、時間稼ぎをしているうちに、全てが後手後手に回り、気づいたときには“炎上”状態になっている。とくに、最近は情報がSNSであっという間に拡散するので、早めに手を打たなければならないのだが、何もせずに眺めているうちに、手遅れになる。2人のおじさんはSNSの威力を全く軽視していたとも言える。

(5)自覚の欠如

最大の問題は、これまで挙げてきた共通点を本人が自覚していないことだ。自覚していなければ、直すことができないので、どうしようもない。

ただ、福田氏と内田氏が典型だが、地位が上がって、権力を握る立場になるほど、自己保身に走りやすいし、特権意識も強くなる。また、想像力を働かせることもしなくなる。過去の成功体験が逆にわざわいして、現状認識が甘くなるのもよくあることだ。

だから、偉くなるほど、自分自身を振り返るまなざしを持ち、ここで挙げた共通点が自分にもあるのではないかと問いかけるべきである。ところが、実際には、自分自身を振り返ることができずに暴走して、墓穴を掘るおじさんが少なくない。

そういうおじさんの典型が福田氏と内田氏だった。世間はあきれたが、本人は世間の反応に無頓着で、こうした無頓着さが反感と怒りをさらにかき立てたように見受けられた。この手のおじさんを反面教師にして、自分自身を振り返るまなざしを持ち、自滅しないように気をつけたいものである。

(写真=iStock.com)
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