企画づくりの定番「ブレスト」。参加者同士の批判を禁じたうえで、次々とアイデアを出していく手法だ。だが、バンダイで「∞プチプチ」などのヒット商品をつくった高橋晋平さんは「企画づくりは一人から始めないとダメだ」という。また編集者として『宇宙兄弟』など数々のヒット作を担当した佐渡島庸平さんは「ブレストでは誰かが責任を持ちたいアイデアが出てこない」という。企画の達人同士の対談をお届けしよう――。(第2回、全3回)
佐渡島庸平さん(左)と高橋晋平さん(右)

コンテンツは「波紋的」に広がっていく

【高橋】佐渡島さんは担当編集として『ドラゴン桜』や『宇宙兄弟』を世に出したヒットメーカーですよね。ヒットする企画を生み出すには、なにが大事なんですか。

【佐渡島】今、僕は「コンテンツは波紋的に広げないとダメだ」って言い方をしています。

【高橋】波紋ですか。

【佐渡島】まず自分のまわりにある小さなコミュニティに企画を出す。反応がよければ、波紋のようにコミュニティの中で評判が広がり、ある段階からはさらに外のコミュニティにも評判が伝わる。そうした波紋はどんどん大きくなっていくはずです。

今までのビジネスって、社内で波紋を起こせていないのに、無理やりその企画を市場に出してみて、初速がよければ「波紋が起きた」といえるし、ダメだったら終わり、みたいなやり方でしたよね。要は、よくわからない遠くの池に無理やり石を投げて、波紋が起きるかどうか試していたんです。そうじゃなくて、もっとクリエイター自身が、企画を投げたらすぐに反応が返ってくる身近なコミュニティを持っていたほうがいい。

【高橋】自分のまわりにあるコミュニティが大事ということですね。

【佐渡島】はい。かつては会社がコミュニティになっていましたが、いまは社員に業務上の役割しか求めていないことも多い。でも、人はコミュニティに所属していないと成長機会を失うと思うんです。

「企画づくりは一人から始めないとダメだ」

【高橋】コルクでは会員制の「コルクラボ」というオンラインコミュニティで、月2回はオフラインの定例会を開いていますよね。それも波紋を作っていくためのコミュニティですか。

【佐渡島】最終的にはそうしたいなと思っています。ただ「ヒットの仕掛けを作るために集められた」だと、メンバーは別に面白くないじゃないですか。だから僕がやることにみんなが協力してヒットさせるんじゃなくて、参加しているメンバーがコミュニティに何かを投げ込んで、その中で話題になれば波紋が広がって売れる、という形を目指しています。僕だけじゃなくて、メンバー全員がラボに企画を投げ込める状態を作りたいんです。

【高橋】今、メンバーは何人くらいですか。

【佐渡島】今はまだ120人ですね。

【高橋】仮にそこで120人全員が「すごい」となった企画が生まれたら、その先に行けるということですか。

【佐渡島】行きやすいでしょうね。そもそも、120人程度を興奮させられないものは無理だろうなと思います。

【高橋】コルクラボ内のプロジェクトって、まず一人がやりたいと言って企画を投げ込み、それに対して「私もやりたい」「一緒にやんないか」みたいに参加者が広がっていくんですか。

【佐渡島】そんな感じですね。

【高橋】ですよね。僕が著書『企画のメモ技』で言いたかったのは、「企画づくりは一人から始めないとダメだ」ということです。会社って、「ブレストしましょう」「みんなで考えよう」とかなんとかいって、人を集めようとするんですけど、それだけでは絶対何も起きませんからね。