※本稿は、田中道昭『2022年の次世代自動車産業 異業種戦争の攻防と日本の活路』(PHPビジネス新書)の第3章 「『メガテック企業』の次世代自動車戦略」(全41ページ)の一部を再編集したものです。
自動運転車による物流事業の強化を狙う
アマゾンが自動運転車を研究しているという事実は、以前からしばしば報じられてきました。
もともと、物流拠点においては早くから無人システムやロボットによる商品管理システム「アマゾン・ロボティクス」を導入し、効率化を図ってきたアマゾンです。ドローンを用いた配達の拠点となる、高層型のドローン物流センターの特許も公開しており、アマゾンの無人化、ロボット化の流れは今後も加速していくことは間違いありません。
ジェフ・ベゾスは、2017年5月に米国インターネット協会で行われた対談においてAIのもつ大きな可能性について述べた際に、「自動運転車」(self-driving car)にも言及していました。
そして自動運転車の本質はロボットそのものです。配送の効率化に向けて、自動運転技術を活用する専門チームを社内に設けたとの報道もあります。そこでは、トラックやフォークリフトを自動で走らせることを想定しているといいます。
2017年1月には、自動運転車関連の特許を取得
2017年1月には、自動運転車関連の特許を取得していることもわかっており、自動運転の分野に参入することは、確実だと見られています。その特許は、幹線道路網において複数の自動運転車を制御するためのシステムに関するもの。状況にあわせて自動運転車が最適な車線を識別するための技術であるようです。アマゾン・テクノロジーズという子会社が2015年11月に申請し、2017年1月に成立しました。
物流において自動運転が実現すれば、商品の配送に関するコストを大幅に削減できるはず。すでに自社ブランドの物流網を整備しつつあることを考えても、彼らの狙いの一つは、物流事業の強化です。アマゾンが自動運転車を開発するメリットは大いにあります。
アマゾンにおける自動運転車の開発はかなりの段階まで進んでいるとみていいでしょう。私がそう分析する根拠は、アマゾンが2016年に発表した無人スーパー「アマゾン・ゴー」にあります。