「ニックネーム」で対等に議論する

──会社の「コレやりたい!」と、個人の「コレやりたい!」という気持ちが明確で、その実現のために、仮説検証サイクルを回しているように感じます。

【玉川】新製品リリースも、まさに仮説を立てている感じです。値つけも製品名も本当にウンウン言って、こうでもない、ああでもないと考えています。でも振り返ると、実はそれが楽しいんです。仕事の面白さはこういうところにあると思いますね。

──やりたいことが明確だから仕事も楽しいのですね。一方で低迷する組織だと、必ずしも自分がやりたい仕事をしていないし、事実ベースの議論も少ないですね。

【玉川】平等に議論を戦わせない会社が多いのでは? ソラコムは「さんづけ」を禁止しています。新メンバーが入社したら僕のことは「ケン」と呼んでもらいます。もちろん新メンバーも自己紹介の時にニックネームをつけます。慣れるまでしんどいですが、「玉川社長」だとその時点で対等になりません。議論の立ち位置として、まずは対等。その上で「やりたいんです!」みたいなパッションも重視しながら、「事実ベースでこう考えた」というロジカルシンキングも重視しています。そのバランスがとても大切ですね。議論は、準備してお互いに真剣にならないとできないので、しんどいですよね。でもやればやるほど、必ず良いものになる。

──事実とロジックを徹底した議論は大事ですね。

【玉川】お互いに「みんなでいいものにしよう」って思っているから、協力し合うんですね。各自が得意技を持っているので、それをぶつけ合ってやっています。こうやってどんどんアイデアが形になっていきます。

──ソラコムがどのように仕事を進めているか、その取り組みがよくわかりました。ありがとうございました。

永井孝尚(ながい・たかひさ)
マーケティング戦略コンサルタント
1984年慶應義塾大学工学部卒業、日本IBM入社。マーケティング戦略のプロとして事業戦略策定と実施を担当。さらに人材育成責任者として人材育成戦略策定と実施を担当。2013年に日本IBMを退社。ウォンツアンドバリュー株式会社を設立して代表に就任。執筆の傍ら、幅広い企業や団体を対象に新規事業開発支援を行う一方、講演や研修を通じてマーケティング戦略の面白さを伝え続けている。主な著書に『100円のコーラを1000円で売る方法』『戦略は「1杯のコーヒー」から学べ!』(すべてKADOKAWA)、『これ、いったいどうやったら売れるんですか?』(SB新書)、『「あなた」という商品を高く売る方法』(NHK出版新書)などがある。
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