「会社への満足度が60~70点の人に書いた」

上は向かなくていいです。前を向いて歩きましょう――。

『社畜上等!』とは随分パンチの利いたタイトルに思われるが、添えられた副題は「会社で楽しく生きるには」。ブラック企業を礼賛したり、仕事に命を懸けることを推奨したりしている本ではない。

多くの人は企業に属す人生を送る。本書は、どうせ会社に勤めるのならば、その会社を利用し、楽しく生きようというメッセージを込めた働き方エッセイ。組織への向き合い方や距離感を再考することで、自分を前向きに持ち直す方法を提案する。「会社への満足度が60~70点と感じている人に書いた」そう。

グローバル資本主義が発達する中、「独立した個人」を求め続けた日本社会だが、今日に至って「人間って強くないことが明らかになってきた」。少子高齢社会で親の介護や子育て問題を抱えながら働く人も多い。だからこそ会社を「よりどころ」や「コミュニティ」として捉え直すべき時代になってきたという。

企業に所属していることで得られるメリットを最大限利用し、「頑張るというより、斜に構えたように面白がる」。それが常見氏の言う「楽しんだもん勝ち」の社畜上等ライフだ。会社員として働く現状を肯定しながらも、己の能力の成長を図る。いい意味で「自己本位」な考え方だ。

仕事への向き合い方を変えることで、勤めた会社に自分の人生をチューニングさせる。そうすれば、マンネリ化した会社員生活が100点を超えるかもしれない。

上昇志向を強いられることに疲れた「社畜」には、まさに一服の清涼剤だろう。まずは楽しく働くことが第一。本書はその目標を達成するための示唆に富んでいる。

常見陽平(つねみ・ようへい)
札幌市出身。一橋大学大学院修了。リクルート、バンダイ、クオリティ・オブ・ライフ、フリーランス活動を経て2015年4月より千葉商科大学専任講師。専攻は労働社会学。妻に「あなたは本当にかわいい。だからメディアに呼ばれるのね」と分析されている。
(撮影=梁 観児)
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