しれっと小学生以下の屁理屈を言って人をイラつかせる

僕の傍聴歴の中でも群を抜いて器の小ささを感じたのは、かれこれ10年ほど前に聞いた、前科7犯の窃盗常習犯オヤジの言い訳だった。東京・池袋駅前で自転車カゴに置き忘れられていたセカンドバッグを盗んだ容疑だが、断固として否認。近くの交番にいた警察官が一部始終を見ていて、職務質問の末に逮捕されたが、その言い訳がふるっている。「たしかにバッグをかごから取り出したが、盗むつもりはなく、交番に届ける途中だった」から無実だと言う。

写真はイメージです(写真=iStock.com/South_agency)

それはおかしい。被告人はバッグを持つと、交番とは逆の方に歩きだしていたではないか。検察の追求に、しれっとしてこう答える。

「たしかに逆方向に歩きましたが、気持ちとしては届けるつもりでした」

首をかしげるしかない言い草だが、弁護人はマジメな顔で裁判長に訴える。

「被告人の行動は怪しいかもしれませんが、大きく迂回しながら交番に向かおうとしていたにすぎず、無罪です」

こんな弁護をするために法曹界に入ったわけでもあるまいに。誰の心にも響かない主張と、小学生以下の理屈。勝ち目はまったくない。それでも人は黙ってはいられないのだ。

▼言い訳=自己正当化なので、言うのをやめてみる

マナー違反したとき反射的に言い訳するのは一種の習慣にすぎない。家でも職場でも一切言い訳しないと決め、一週間それを守るだけで、劇的に変わることができるだろう。

きっと一切言い訳しないと決めた初日から、自分がこれまでいかに言い訳を多用してきたかが実感できるほど、ガマンの回数が多いはずだ。謝罪だけで終わらせることに不安を感じるかもしれない。

それが3日目あたりから変わってくる。言い訳をしなくてもその場は収まるものだし、話も短くて済むのだ。遅れたり約束を破ったりした理由を尋ねられたときは、もちろん答えていい。

「電車に乗り遅れてしまいました」

内容は同じでも、これは理由の説明であって言い訳ではない。言い訳でなければ相手に“小物感”を与える心配もなく、萎縮せずにビジネスの話に入っていけるだろう。

もうひとつの効果は、気分が前向きになることだ。言い訳は、自分の行動を正当化することなので、疲れるうえに、自分も相手も面白くない。それだったら、ひとり静かに反省し、過ちを繰り返さない手段を講じるほうがはるかにマシである。

(写真=iStock.com)
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