政権批判を繰り返す民放各社への不満か

それなのになぜ、安倍首相は放送法4条の撤廃をもくろむのだろうか。

そこには「安倍1強」という政治力を使って、いまのうちに安倍政権批判を繰り返す民放各社をたたこうとする野心が透けてみえる。

東京新聞や産経新聞が4月2日付紙面に掲載した共同通信社の全国緊急電話世論調査(3月31日、4月1日実施)では、安倍内閣の支持率は42.4%で、前回調査(3月17日、18日実施)から3.7ポイント増えたものの、不支持は47.5%(前回比0.7ポイント減)で、不支持が支持を上回る状態が続いている。

安倍首相に対する世論の風向きは決して良いとはいえない。

さらに共同通信の世論調査では、学校法人森友学園への国有地売却を巡る財務省の決裁文書改ざん問題で、証人喚問を受けた佐川宣寿前国税庁長官の証言について「納得できない」という回答が、72.6%にも上った。改ざん問題で「安倍晋三首相に責任があると思う」は65.0%だった。

9月には自民党の総裁選も控えている。当然、安倍首相には焦りがある。その焦りで拍車が掛かり、放送法4条撤廃に向けて突っ走っているのかもしれない。

「金儲けだけが目的の業者も参入」と読売

ここでいつものように各紙の社説を見ていこう。

まずは1番手に反対の“のろし”を上げた3月25日付の読売社説。冒頭から「テレビ番組の質の低下を招き、ひいては、国民の『知る権利』を阻害する懸念がある。安倍首相が目指す放送事業見直しは、問題が多いと言わざるを得ない」と厳しく指摘する。

そのうえでこう指摘する。

「放送局は、放送法1条で『公共の福祉の健全な発達を図る』ことを求められている。民放はこうした役割を担い、無料で様々な番組を提供してきた。同様の規制がなく、市場原理で動くネット事業者を同列に扱うのは無理がある」

沙鴎一歩もテレビ局とネットの垣根を取り外し、規制や制度を一本にすることには無理があると思う。インターネット事業者には悪いが、将来どう変わるか分からないネットと放送倫理に立つ既存の放送局とをいっしょに論じるわけにはいかない。今後、じっくりと時間をかけて議論を尽くす必要がある。決して急いではならない。

ナベツネ氏が安倍首相を見限った?

「特に問題なのは、見直し案が、『公序良俗』『政治的公平性』『確な報道』に基づく番組編集を求めている放送法4条の撤廃を含んでいることだ」
「規制が外れれば、放送とは無縁な、金儲けだけが目的の業者が参入し、暴力や性表現に訴える番組を粗製乱造しかねない。家庭のテレビで、子どもを含めた幅広い人々が目にする恐れがある」

こうした読売社説の訴えも納得できる。

それにしてもいつも安倍政権を擁護する読売社説が反対論を展開するのは実におもしろい。

日本テレビなどとの深い関係があるからだろうが、放送関係者の間では「ナベツネ(読売新聞グループ本社主筆の渡辺恒男氏)が支持率の落ちてきた安倍晋三を見限った」とのうわさも出ている。