毎日社説は政治介入の具体的事例を挙げる

読売の次に社説のテーマにしたのが、毎日新聞だった。3月30日付の毎日社説を見てみよう。

「4条の扱いは、放送と政権の関係が問われるたびに注目されてきた」と書き、「放送局が目指す倫理規範とみるのが通説だが、国は行政処分ができる法規範との解釈を取っている」と指摘する。

放送法4条は一方では放送局を守り、その一方で政治の介入を許してきた。つまり放送法4条は放送局にとって諸刃の剣なのである。毎日社説は政治介入の具体的事例を挙げる。

「安倍政権下の2014年衆院選では、自民党が民放とNHKに選挙報道の公平中立・公正を求めた。直前の番組では、首相が自分に批判的な声を集めた街頭インタビューに反発する場面があった。16年には、当時の高市早苗総務相が4条違反で電波停止を命じる可能性に言及した」

政治的介入があるからといって放送法4条を撤廃するわけにはいかない。その理由を毎日社説はこう指摘する。

「4条を撤廃しインターネット事業者などが参入しやすくなると、極端な表現をする番組やフェイク(偽)ニュースが横行する恐れがある」

まさにその通りだ。

時間をかけた「根源的な議論」が必要

最後に3月31日付の朝日新聞の社説。冒頭で「フェイク(虚偽)ニュースの拡大と、それへの対応が大きな社会問題になっているときに、性急で乱暴に過ぎる」と書く。

さらにはこう指摘する。

「不偏不党な番組づくりを通して健全な民主主義を築くという、これまで放送に期待されてきた使命をどう考えるか。ネットの発達に伴い、放送と通信の境が見えにくくなっているからこそ、社会でどんな規範を新たにうち立てるべきか」
「そうした根源的な議論こそ、求められているのではないか」

こうした朝日社説の指摘には賛成である。いま求められているのは、やはり時間をかけた議論なのだ。

4月2日に安倍首相がナベツネ氏と会食した理由

4月2日、安倍首相は東京・丸の内のパレスホテル東京でメディア関係者らと会食している。朝日新聞と時事通信の「首相動静」によれば、出席者は渡辺恒雄読売新聞グループ本社主筆、福山正喜共同通信社社長、熊坂隆光産経新聞社会長、芹川洋一日本経済新聞社論説フェロー、北村正任毎日新聞社名誉顧問、海老沢勝二NHK元会長らだったという。

一体なにが話し合われたのか。今後、読売新聞などの論調に変化はあるのか。注意深くウォッチする必要がある。

(写真=時事通信フォト)
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