2月5日月曜、ダウ平均株価が過去最大の下落をした理由
2018年2月5日月曜日、ニューヨーク株式市場のダウ平均株価が大幅に下落、1175ドル安というリーマンショックを超える過去最大の下落幅を記録した。翌6日の日経平均株価は一時1200円以上下げ、香港株や上海株が急落するなど、パニック売りが連鎖して世界同時株安の様相を呈した。その後も反発と急落を繰り返す不安定な相場が続いている。
アメリカの景気は拡大基調で、企業業績も良好だ。ファンダメンタルズから米国株の急落を示唆する特異点は読み取れない。しかし株価は暴落した。かつてのブラックマンデーがそうだったように。
今から30年ほど前の1987年10月11日、私はニューヨーク・タイムズ紙に「東京のバブルが崩壊すればNYの株式市場が暴落する」という内容の記事を寄稿した。この記事が約1週間後の10月19日に起きたブラックマンデーの引き金を引いたと騒がれたのだが、私が言いたかったのは「金融経済と実体経済の乖離」である。
当時、金融経済は毎年4%台でずっと伸びていたのに、実体経済は同2%しか伸びていなかった。このギャップで生じた余剰資金が株や不動産、新興国の株などに流れ込んでバブル化する。バブルが弾ければ、株価や地価がいつ暴落しても不思議ではない。80年代からボーダレス経済、世界連結経済を理論的に提唱してきた私からすれば、「(金融経済と実体経済のギャップが流れ込んで生じた)東京のバブル崩壊が、ニューヨーク市場を暴落させる」のは当然の帰結だった。
今回の株価暴落も金融経済と実体経済の乖離によってもたらされたと私は考える。金融経済と実体経済のギャップは必ずどこかで調整される。それが株価暴落という形で表れたのであって、その意味ではまさしくブラックマンデーの再来なのだ。
さて金融経済と実体経済の乖離はなぜ起きるのか。
理由は2つある。1つは古い経済学に基づいて景気を刺激するために、金利を下げたり、通貨の供給量を増やしたりする政治的な動きだ。ケインズ以来、20世紀のマクロ経済的な景気刺激策、つまり世の中の金回りをよくする方法は金利を下げることとマネタリーベースを増やすことの2つしかない。だから安倍晋三首相もトランプ大統領もそこをいじりたがる。有効需要をつくるために金利を安くして借りやすくしたり、通貨供給をジャブジャブにしたりするのは政治的にもやりやすい。選挙のときも「景気対策を重視する」と言ったほうが倹約ベースの経済政策を主張するよりも圧倒的に民衆の受けがいいのだ。