疲れやすいのは「うつ」の前兆かも

同院は「男性外来」を開設しているが、来院者のほとんどが40~50代だ。きっかけとなる主な症状は「疲れやすくなった」。テレビなどに取り上げられて話題になったLOH(加齢男性性腺機能低下)症候群、いわゆる男性の更年期を疑って受診する人が増えているという。しかし血液検査で男性ホルモンの値を見ると、多くは低下が見られない。そのほとんどはLOH症候群ではなく、うつ病の前兆であることが多い。「軽いうつなら、漢方薬が効くことも多いです。漢方では、うつの前兆を『気滞(きたい)』、うつになると『気うつ』と呼びますが、気滞には半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)や柴朴湯(さいぼくとう)などが効果を示す場合があります」。

LOH症候群は、疲れやすくなるほか不眠、いらいら、性機能低下、頻尿などの症状が特徴だ。治療は、男性ホルモン(フリーテストステロン)の補充を行うこともあるが、岡本氏は「過剰摂取や副作用のおそれもあるため、当院ではアメリカから輸入しているDHEAというサプリメントを使います」と話す。このサプリメントは、男性ホルモンや女性ホルモンになる前の「前駆物質」であるため、必要な分しか男性ホルモンにならず、過剰摂取を防げる。

また、漢方では、加齢による体の変化、老化を「腎虚(じんきょ)」と呼ぶ。腎臓の老化に象徴されるが、それだけでなく、広く骨や脳、耳、生殖能力や排泄能力など全般の機能が低下することを指す。

漢方薬では副作用が出ることも

老化による症状で多いのが、腎臓の老化による頻尿だという。「頻尿の原因は、腎機能低下の場合もあれば、前立腺肥大による尿道圧迫、糖尿病の場合もあります。原因によって治療も変わるので、気になる人はまずは病院で診察してもらいましょう」。

男性の老化は、頻尿のほか、耳鳴りや薄毛などさまざまな症状がある。ED(勃起不全)には、バイアグラやシアリスなどの薬を処方することもある。こうした男性力の衰えに対しても、「漢方では八味地黄丸(はちみじおうがん)や六味丸(ろくみがん)など、症状を改善する滋養強壮剤がいくつかあります」。

同院ではダイエット外来も開設しており、医師と管理栄養士による食事療法に加え、必要に応じて食欲抑制剤などの薬や、サプリメント、防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)などの漢方薬も使う。「肥満の原因にもよりますが、基本的に副作用の低いものから使います。さらに、保険適用かどうかによって費用も変わるので、患者さんと相談しながら決めます」。

サプリメントは薬ではなく、栄養補助食品。岡本氏は「摂りすぎると害になるものもありますが、基本的に食品なので副作用はありません」と言う。一方漢方薬はあくまでも薬なので、副作用が出ることもある。ただ、同じ薬であっても、西洋医学の薬とは、根本的な考え方が違う。西洋医学の薬は、例えば「頭痛」であれば「痛み止め」を処方するなどの「対症療法」。一方漢方は、頭痛を引き起こす原因に働きかける根本治療を目的としている。