加齢が引き起こす体の不調。放置していれば、取り返しのつかない事態を招くこともある。「プレジデント」(2018年1月1日号)より、9つの部位別に、名医による万全の予防策を紹介しよう。第9回のテーマは「更年期・頻尿・メタボ」――。

血管の老化防止に効果がある「EPA」

「男性は、男性ホルモンの分泌が低下し始める40代ごろから、内臓脂肪が増えやすくなり、血管の病気や糖尿病などにつながるメタボリックシンドローム(メタボ)の状態になる人が増えます」と糖尿病の専門医で、岡本内科クリニックの院長を務める岡本亜紀氏は話す。

岡本氏は、西洋医学の薬、漢方薬、サプリメントを組み合わせ、糖尿病などの生活習慣病の治療に当たっている。糖尿病患者の血管年齢を測ると、実年齢よりも10歳程度上まわる傾向があるという。

血管年齢は、血管の硬さと血管内皮の厚さから測定する。年齢が高いと、血管の柔軟性が低く、内径が狭いため血圧が高くなる傾向があり、吸収できないコレステロールの残骸が血管の中に沈着して脳梗塞や心筋梗塞などにつながりやすい。

血管の老化防止に効果があるEPA。病院では高脂血症などの治療に、高純度EPAが薬として処方される。

血管の老化防止で、岡本氏が注目するのが、「EPA(エイコサペンタエン酸)」という脂肪酸だ。

主にイワシ、サバ、アジなどの青魚の脂に多く含まれ、血液をサラサラにする作用がある。血液検査で、肉に多く含まれる「AA(アラキドン酸)」に対するEPAの比率を見ると、血液がサラサラかドロドロかがわかる。この値が高いほど、血液がサラサラで血栓などができにくい。欧米人の平均は0.1、日本人の平均は0.4だが、0.7以上だと血液がサラサラの理想的な状態になる。

「血管の中では常に、内皮がはがれ小さな炎症が起きています。EPAにはその修復作用があり、1日に1800ミリグラムの摂取が推奨されています」と岡本氏は説明する。しかしこれだけの量を、毎日青魚などの食品から摂取するのは難しく、カロリー過多にもつながる。そのため同院では、薬である高純度EPAを処方している。EPAは、サプリメントとして市販されているものもあるが、処方薬とは成分の含有量や品質が異なるので注意が必要だ。