「やらない勇気」と「やりぬく力」が大切

転職してしばらくは、教わったとおりに基本に忠実にコツコツとやっていくことで、何とか順調に結果を出していくことができたと柴田は言う。

「でも3~4年たってさらに高い営業成績を、と考えたときに、現状の延長線上では難しいと思いました。

当時、私のいた営業所には、社内のチャンピオンに2回輝いた凄腕の先輩がいました。その先輩は、お客さまへの徹底した対応、次々と仕事をこなすパワーなど、何から何まで人並みはずれていました。その人の営業スタイルをまねて、やみくもにゴルフや飲み会にとことんお付き合いする、という時期がありました。

今考えると浅はかですが、そのときは表面的なところをまねしていれば先輩のようなスーパー営業マンになれるのではないかと勘違いしたんです。でも営業成果には結びつかず、業績は下降線をたどり、体も壊してしまいました。その結果思ったんです。こういうスタイルは自分には合わない、この仕事を続けていくためにはこれではダメだ、と」

柴田は、「自分に合うスタイルとは何だろう」と自問してみた。そして、「自分の強み」を改めて考えるようになったという。

柴田を採用し、入社時から見守ってきた当時の支社長は、柴田の人となりについて次のように語る。「とても誠実で実直。やると決めたら過剰なまでにとことんやってみる性格です。そして、非常に頭がよくて、ロジカル・シンキングが得意ですね」

柴田は自分の資質や性格を踏まえ、まずは自分自身を会社に見立て「自分事業計画書」を作成することにした。

・理念
・ミッション・ステートメント
・中期経営方針
・事業の定義と事業領域
・3年後定性目標・定量目標
・事業環境分析と戦略課題

など、50近くの項目を挙げて作成したそうだ。

事業計画書作成にあたってのポイントは、「強化すべき分野」を挙げる一方で「注力しない分野」も明記したことである。

「時間やエネルギーには限りがありますから、することとしないことの選択は大切です。成果を挙げたい領域、自分が最も力を発揮できる範囲を見極めて、そこに自分の力を集中することが大事だと思います。

できないと思うことは始める前にあきらめる。できると思うことはできるまでやる。つまり、『やらない勇気』と『やりぬく力』が大切なんです」