※本稿は、『プルデンシャル流 心を磨く営業』(プレジデント社)の第2章「自己鍛錬」の一部を再編集したものです。
失敗を検証して成功パターンを再現
名古屋北支社の石橋誠志の営業スタイルは、常に正攻法であること。セールスプロセスの基本に忠実であるとともに、常に自己検証を続けている。
「うまくいった商談とうまくいかなかった商談を、常に自分の頭の中で再現して検証しています。うまくいかなかった場合は、その流れを思い出してみて、もしやり直せるとしたら、どうすればよかったのか、何を言えばよかったのか、何を言わなければよかったのかをじっくりと考えます。とにかく、やりっぱなしにしないということですね」
石橋は新人や後輩に自身のロールプレイを披露する際には、要所要所で進行を止めて受講者に「なぜそれを言ったのか」「なぜそのフレーズなのか」「そこで何を伝えたいのか」と質問し、彼らにまず答えさせた上で、解説を加えるのだそうだ。
「各フレーズの意味をきちんと理解しているかを確認しています。全く同じスクリプトでも売れる人と売れない人がいるということは、単なるフレーズの問題ではないのです。どれだけ自分で理解して、腹落ちして話しているかが大切なのです。
そして、きちんと逆算して何を話すかを考えることですね。○○ということを聞き出すために△△と質問する、△△を考えていただくために××と質問する──という流れです」
石橋は自身の経験を踏まえ、失敗には限られた数のパターンしかないと言う。
「失敗を検証し、その理由やどうすればよかったのかをきちんと理解すれば、成功するパターンの再現性を高めることができます」
石橋は入社以来、人よりもずっと売り上げを上げているのに、周囲に対して「行くところがない」と言うのが口癖だったのだそうだ。
石橋は、うまくいっている営業パーソンは総じて危機感が強いと語る。
「誰でも危機感はあると思うんですが、売れている人は『危ない』という非常ベルが鳴るのが他の人より早いと思います。どん底の一歩前でようやくベルが鳴る人がいれば、かなり早い段階でベルが鳴る人もいる。この違いが結果の差を生む気がしています。
ただ、不安だということを決してマイナスに捉えずに、1日でも早く不安とうまくつきあえるようになれればいいと思います。私は、入社して5年くらいはうまくつきあえず、不安で苦しかったのを覚えています」
不安を解消する手段として、まずは会社が提示したマイルストーンを追いかけることにしたと石橋は言う。
「どうすればうまくいくのか、成功するのかわからない。だから社内コンテストの入賞など、会社が提示するマイルストーンに乗ってみることにしました。それをはずしたら、自分がどこまで落ちていくかわからない。だから頑張ってしがみついていました。自分の不安感が少し落ち着いたのは、入社して6、7年たってからでしょうか」