2月19日付の産経新聞と東京新聞が同時に「専守防衛」をテーマに社説を書いた。2紙のスタンスは正反対だ。産経社説が安倍首相を褒めつつ貶すという忙しい論を展開する一方で、東京社説は「自衛隊が保有する防衛装備の『質』も変化しつつあります」と「です・ます」調で懸念を示す。日本はどちらに進むべきなのか――。
2月19日付の産経新聞と東京新聞が同時に「専守防衛」をテーマに社説を書いた。2紙のスタンスは正反対だ。産経社説が安倍首相を褒めつつ貶すという忙しい論を展開する一方で、東京社説は「自衛隊が保有する防衛装備の『質』も変化しつつあります」と「です・ます」調で懸念を示す。日本はどちらに進むべきなのか――。

右翼・保守新聞と左翼・理想新聞

2月19日付の産経新聞と東京新聞を見て驚いた。くしくもともに社説で「専守防衛」をテーマに取り上げていたからである。相手から武力攻撃を受けたときに初めて防衛力を行使する。その防衛力は自衛のための必要最小限に限る。これが専守防衛である。

この専守防衛について産経社説(主張)は「国民を守りきれない戦略は見直し、反撃力をもつ『積極防衛』に転じるべきだ」などと社論を展開する。産経新聞らしいといえば、そうなのだか、社説として肝心な冷静さにやや欠け、一方的に専守防衛を「戦略」と見なすところなど、どこか空回りしている。

これに対し、東京社説は「気掛かりなのは安倍政権の下、専守防衛の中身が変わりつつあるのではないか、ということです」と謙虚に訴え、「専守防衛とは何か、原点に返って考える必要があります」と書く。

右翼と左翼、保守と革新、現実主義と理想主義……。産経新聞と東京新聞はそのスタンスを正反対に置く両極端の新聞社である。産経社説と東京社説を読み比べるうえでは、このスタンスの違いを頭に入れておく必要がある。

産経は「本土決戦と同じ誤った戦略だ」と批判

「戦後日本の防衛の基本戦略として絶対視されている専守防衛について、安倍晋三首相がその危うさを率直に指摘したことを評価したい」

産経社説はいきなりこう書き出す。

一体、何を訴えたいのか。そう思って読み進むと、産経社説はこの間の安倍首相の国会答弁を持ち出す。

「首相は14日の衆院予算委員会で『専守防衛は純粋に防衛戦略として考えれば大変厳しい』と語った。『相手からの第一撃を事実上甘受し、国土が戦場になりかねないもの』という認識からである」

しかも安倍首相を「歴代首相で、専守防衛の欠陥をここまで認めたのは安倍首相が初めてではないか。極めて妥当な見方だ」と持ち上げ、「政府・与党はこれを機に、専守防衛の問題点を国民に対して積極的に説明すべきである」と主張する。

さらにはこうも指摘する。

「これにこだわれば、有事の際、国民や自衛隊員の犠牲をいたずらに増やしてしまう。先の大戦でとらなかった『本土決戦』にも等しい誤った戦略である」
「侵略される可能性はかえって高まる。外国からすれば、原則として自国の領域が自衛隊から攻撃を受けることはなく、低いリスクで日本を攻撃できるからだ」