アマゾンの社員はどんな人たち?

――アマゾンの社員には、どんなことが求められますか?

東京・目黒のアマゾンジャパン本社内の食堂。社員の誰かがワークポリシーである『Work Hard, Have Fun, Make History!』と書き込んだという。ハードワークのなかにも自らもチームも業務改善を繰り返して成長を楽しむ文化があるという。

 

【チャン】Work Hard, Have Fun,Make History――。創業者のジェフ・ベゾスがアマゾン設立のときに語った、アマゾニアンの行動規範です。「Work Hard」は、一生懸命働くということ。もちろんやみくもに頑張るだけでは意味がありません。お客様第一というミッションのためにハードワークします。「Have Fun」、つまり楽しむことも大切で、私たち自身が楽しみ、お客様に素晴らしさを伝えていきたいと考えています。最後の「Make History」も重要な考え方。私たちは前例のないことにチャレンジして、お客様の生活や人生にいい影響を与えようとしています。たとえばインターネットで商品を販売するのはアマゾンが初めてやったこと。さらにインターネットで販売した商品を非常に速いスピードで届けるサービスも、それまでありませんでした。これらはまさに歴史をつくったといえますが、これで満足していてはいけない。成し遂げるべきことの基準をさらに高めていきます。

創業者の「ジェフ・ベゾス」。どんな人ですか?

――ベゾスさんは、チャンさんから見てどのようなリーダー?

【チャン】先見の明があります。いま私たちが掲げているミッションは創業当時と変わっていません。それを20年以上前に考えたのですから、ジェフのビジョンの正しさがわかると思います。もう1つ驚かされるのは、お客様に対する情熱。つねにお客様のことで頭がいっぱいという感じなのです。彼はいまでも個人のお客様からEメールで届いた問い合わせに直接答えています。また、革新への情熱もすごい。いまアマゾンはさまざまなイノベーションに挑戦していますが、その背景には積極的にリスクを取ろうというジェフの姿勢があります。次の四半期や来年といったタームではなく、もっと長期的な視野で投資ができるのも、彼の情熱があってこそです。

――チャンさんは、どのようなリーダーを目指されていますか?

【チャン】私はジェフのリーダーとしての資質に惚れてアマゾンへの入社を決めました。私もジェフのようなリーダーを目指したいです。

――一般的に外資系の社長は短期間で交代する。でもチャンさんは在任16年。いつまでお続けになりますか?

【チャン】とてもいいご質問ですね。でも、わからないんです。ただ1ついえるのは、私はいまでも毎日が「Day One(始まりの日)」だと考えています。「地球上で最もお客様を大切にする企業であること」というミッションに向けて、毎日、新しいスタートを切っているつもりです。もちろん私には、アマゾンにおいて多くのリーダーを育てるというミッションもある。アマゾンにはリーダーシップの原則が14項目あり、私がなかでも特に重要だと考えているのは、つねにお客様のことを考えること。そして、何かを選ばなくてはいけないときに正しく判断すること。アマゾンでは1人ひとりがみなリーダーで、それぞれの仕事で素晴らしい仕事をしてくれますから、皆のリーダーシップを引き出していきたいです。

ジェフ・ベゾス
Amazon.comの共同創設者兼CEO。プリンストン大学で計算機科学と電気工学を専攻。1994年にインターネット書店を立ち上げて、95年にAmazon.comとして正式にスタートさせた。資産総額は約11兆円で世界一。

ジャスパー・チャン
アマゾンジャパン合同会社 社長
1964年、香港生まれ。86年に香港大学工業工学部を卒業後、キャセイパシフィック航空に入社。87年にカナダに渡り、プロクター・アンド・ギャンブル・インクに入社し、90年にヨーク大学でMBAを取得。2000年12月にアマゾンジャパンに入社し、2001年4月より現職。
 

田原総一朗
ジャーナリスト
1934年、滋賀県生まれ。早稲田大学文学部卒業後、岩波映画製作所入社。東京12チャンネル(現テレビ東京)を経て、77年よりフリーのジャーナリストに。若手起業家との連載を収録した『起業家のように考える。』(小社刊)ほか、『日本の戦争』など著書多数。
 
(構成=村上 敬 撮影=大槻純一)
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