スシローが高付加価値のすしの販売に力を入れている背景には、「本筋のすし自体を強化しなければ、持続的な成長は見込めない」という判断があると筆者は考えている。かつて業界首位だったかっぱ寿司が、いま業績悪化で苦しんでいる最大の理由は、“変わり種”に頼ることで、「安かろう悪かろう」とイメージをもたれてしまったからだ。スシローは「同じ轍を踏んではならない」と考えているのではないだろうか。

大手回転ずしチェーンは、これまで低価格を武器に成長してきた。それは「安くてうまい」という顧客の満足度に支えられたものだろう。しかし、同じレベルを保つだけでは、顧客から飽きられてしまう。実はスシローなど大手の既存店(開店から一定期間が経過した店舗)の年売上高は前年割れを起こしはじめている。

既存店売上高は各社マイナス

大手5社のうち元気寿司は辛うじて17年3月期が前年比1.8%増と増収になったものの、スシローは17年9月期が1.3%減、くら寿司は17年10月期が1.4%減、かっぱ寿司は17年3月期が4.2%減と、3社が減収になっている(はま寿司は非公表のため不明)。新規出店による増収効果が含まれない既存店売上高がマイナスになっているということは、1店1店の稼ぐ力が弱まっていることを意味しているのだ。

業界首位のスシローといえども安穏としてはいられない。それゆえに、本筋のすしネタで勝負する必要があると判断したのではないだろうか。また、近年は1皿数百円という高級路線の回転ずし店も勢いを得ているため、そういった勢力に対抗するためにも、「安かろう悪かろうではダメだ」という危機感があるはずだ。経営統合を前提に元気寿司と提携したのも、将来的には統合による規模拡大に力を借りて、いいネタを安く仕入れたいという狙いがあるのだろう。

消費者の要求は年々高まり、回転ずし業界の競争は激化している。今後はスシロー以外の各社も、すしネタをより一層充実する方向に動くことが予想できる。しばらく盛り上がっていたサイドメニューの充実競争のように、すしネタの充実競争が起きることは、消費者としては望むところだろう。

佐藤昌司(さとう・まさし)
店舗経営コンサルタント
立教大学社会学部卒業。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。店舗型ビジネスの専門家として、集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供している。
(写真=iStock.com)
【関連記事】
かっぱ寿司は「1皿50円」で復活できるか
"日本一"のラーメン店が100円下げた理由
外国人の接待に「天ぷら屋」が有効なワケ
ステーキに業態転換「幸楽苑」低迷の構造
名古屋でモーニングをしない人気店の秘密